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「たった1人」へのメッセージを語ってもらうために意識していること
インタビューで語られる言葉は、多くの人の目に触れることを前提にした無難な言葉になりがちです。でも残念ながら、その言葉は誰にも届きません。
インタビューはアンケートになってはいけない
と言われるように、相手の貴重な時間を使ってインタビューをするのであれば、聞き手がいるからこそ引き出せる話を聞かなければなりません。
私が取材中に意識しているのは、話し手と一対一の関係性を築くことです。
目の前にあるのが白いアンケート用紙ではなく、ただただ自分に興味を持つ一人の人間であれば、そこで話されることは全然違ってきます。
取材中は一人の聞き手に対して発された言葉であっても、読者にとっても刺激的で、話し手の人間性をリアルに感じられる学びの多い言葉になります。
では、どうすれば話し手と一対一の関係性を築き、「たった一人」に向けたメッセージを話してもらうことができるのでしょうか。
私が意識しているのはこの3つです。
1.相手の少し後ろを「ついていく」
2.相手の感情を丁寧に拾う
3.あえて「私」を出す
成功すれば、相手はこの時間がインタビューであることを忘れて、目の前のたった一人に向けたメッセージを語ってくれます(本当に)。
報道系の取材の場合は、そうした要素はあまり配慮する必要がないケースもありますが、基本的にどんなインタビューでも使えるスキルだと思います。
1.相手の少し後ろを「ついていく」
これは簡単に言うと、「相手のペースで聞く」ということです。相手が言葉を見つけようとする思考過程を、余計な質問で遮ったり、こちらが先回りして話を先に進めたりはしません。
特に大事なのは、FACTに関する質問はできるだけ後回しにすることです。
「それはいつですか?」とか「そのとき何人ぐらいいたんですか?」というような事実を確認するような質問は、言葉を見つける思考をジャマします。
多少わからないことがあってもグッと我慢して、確認するべきFACTはあとでタイミングを見計らって聞くようにします。
また、インタビューを聞き手が先導しようとすると、話し手は圧力を感じます。少し後ろを「ついていく」ぐらいの意識がちょうどいいと思います。
2.相手の感情を丁寧に拾う
聞き手は、話し手の語りの中から「これは実感がこもっていそうだな」「この背景にはすごい思いがありそうだな」という言葉に、まず気づく必要があります。
そして話し手の感情が込められた言葉を見つけたら、しっかり反応します。
思いがけない言葉を引き出す方法はいくつかありますが、話し手の感情を頼りに進んでいく方法が、もっとも負担をかけません。
その言葉を小さくリピートしたり、「それってどういうことですか?」と聞くなどして、「こちらに進むと良い言葉にたどり着けそうですよ」と暗に教えてあげるのが、聞き手の大事な役割です。
3.あえて「私」を出す
これを丁寧に続けていれば、不思議と人間関係のようなものが話し手と聞き手の間に立ち上がってきます。
そこでさらに踏み込んで話してほしいときは、あえて「私」を出して質問をしてみます。
ただ、私の興味関心で聞くことはしません。読者を「私」に置き換えて話してみるということです。例えば、
「もし“私”だったら、そのときこんな風に感じてしまいそうですが、〇〇さんはそんな風に思ったのですね」
と、聞いてみたり
「今の話を聞いて、“私”はこう思いました」
と、感想を伝えたりすると、ぐっとフォーカスした話をしてくださることが多いです。
インタビューで豊かな言葉を語ってもらうために必要なのは、目の前の「私」を、たまたまアサインされた他の誰かと交換可能なライターではなく、「ただただ自分に興味を持つ一人の人間」だと、話し手に信じてもらう努力です。
聞き手はそれを演技ではなく、本心でやることが何より大切だと思います。
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