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短編小説

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・料理 × ショートストーリー ・『星の約束』シリーズ など短編小説をまとめています。
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#恋愛

『星の約束』a-2.スピカ

☆前回までのストーリー☆ すると、妙な事が起こった。 ぼんやりと輝く光の粒のなかで、スピカだけがチカチカと瞬いているのだ。 その青白い輝きは最初、一定の間隔を開けて瞬いているようだった。 しかし、徐々にその間隔は短くなり激しく明滅し始めたかと思うと、最後に大きくピカッと光って消えた。 一瞬の出来事。 時子は目をしばたかせ、もう一度スピカがあった場所を見た。 そこには、ぽっかりと暗い空間が出来ている。 まるで最初から何もなかったかのように。 時子は呆然としてしばらくそこを

サラダは料理ですか?(改)

時刻は17時。外はまだ昼間の暑さを残したままだ。 私(桜・さくら)は仕事用のリュックサックを背負い、空いた両手で買い物袋を持ちながらアパートの古びた階段を上り切りった。額から汗が流れて首筋を濡らしたが、両手がふさがっているのでどうしようもない。部屋の前までたどり着いたときには、汗の筋は3本になっていた。 私の部屋、と言っても二人暮らしだから正確には私たちの部屋なのだが、は築15年のアパートの2階にある。アパートは駅からもスーパーからも遠いが、1LDKでそこそこ広く大人2人

教室

白井美波の席は、教室の一番後ろだった。 その席を美波はとても気に入っている。 美波の通う高校からは海が見える。 学校には立て直したばかりの校舎と、今年の夏休みに立て直す予定の校舎が二つ建っていて、美波たち一年生は古い校舎を使っていた。 他の同級生たちとは違い、そこらじゅうにガタがきた、ヒビや傷だらけの校舎を美波は結構気に入っている。 年季の入った壁や床からは長い歴史が感じられ、今までこの教室を使っていた生徒の息遣いのようなものが聞こえてくる気さえした。 美波の席からは、