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窓を開けて風を入れる。初夏の空気が閉め切っていた部屋にスーッと入り込み、スパイスの香りが少し和らぐ。 紗子(さえこ)は読みかけの本をテーブルの上に伏せ、大きく伸びをした。 時刻は午後4時。もう少ししたら小学生の息子達が帰ってくるだろう。 『お母さん、今日の晩ごはん、なに?』 小学3年生の兄・浩(ひろ)は、帰宅すると決まってこう言う。もう口癖なのだ。最近では弟・明(あきら)も兄の真似をするようになったので、紗子は2回、同じことを答えなければならない。 それは面倒くさい