愛するとは?心理学が解き明かす、愛することのメリット3選
<はじめに>
世の中では、「なぜか人に愛されるコツ」「愛されメイク」など“愛される”ことに価値が置かれていますが、「愛する」という言葉についての情報はあまり発信されません。
しかし、大人になり、父母からの愛、友愛、恋愛、結婚など様々な愛にまつわる経験する中で、「愛する」とはどういうことだろうとふと思うことはありませんか?
実は心理学の分野では、愛されることを目指すことには深刻なデメリットがあり、「愛すること」のほうが人生を充実させるのにメリットが大きいという科学的な根拠があります。
この記事を読むことで、愛することが明確になり、そのメリットを知ることによって、家族・友達・異性を改めて愛してみようかなと思うようになったり、愛とどのように向き合えばよいのかについて知ることができたり、人生が豊かになります。
普段、真面目に考えるのが恥ずかしくて茶化してしまいがちな「愛する」という行為の意味とそのメリットについて、今回は臨床心理士が真剣に心理学的な知見を提供します。
「愛する」ことの心理学的な要素と効果
心理学の中で愛することに関係する有名な研究と言えば、フロイトの性愛やボウルビィの愛着理論があります。ただしこれらは親子関係における「愛する」行為の研究であるため、また別のところで話したいと思います。
一般的に用いられる「愛する」という概念について、直接的に研究した心理学者は誰かと言うと出てくるのはエーリッヒ・フロムです。彼は愛することについて「対象を能動的に尊重し、その生命と成長を気にかけることである。」とシンプルに定義しています。
また、近年では、スターンバーグ(1988)という心理学者が「愛の三角理論」を提唱し、こちらが一般的に言われる「愛する」ことに関する研究をしていると思われます。「愛の三角理論」では愛するという行為には以下の3つの要素があると言われています。
以下にこれらについて詳しく話していきたいと思います。
親密性
親密性とは、親しさや結合、相手と繋がっているといった感情を愛情関係の中で経験することなどを含むものを指します。
親密な好きは、人が他の人と絆を感じ、温かさや親密さを感じる真の友情を特徴づけると言います。
心理学の研究では、愛するという行為の中で、親密性が高まるほど、相手との関係における自己認知が比較的ポジティブなものとなるという結果が出ています。
つまり、自分の愛する人と仲良くなることで、「自分は大切な存在だ」「自分はうまくやれている」と感じ、自己評価や精神的健康度も高まります。
情熱
情熱とは、ロマンスや身体的魅力、性的な達成を引き起こすような動因を内包するものを指します。情熱的な愛の側面はしばしば「一目惚れ」として感じられます。
心理学の研究では、情熱が高まることが、「魅力性」と「人柄の良さ」に正の相関があり、情熱得点が高いほど、関係での自分を魅力的で人柄が良いと見なすという結果になっています。
これは、愛についての情熱が燃え上がることで、自分が魅力的になるために外見や内面を磨くための自己投資をするからだと考えられます。
コミットメント
コミットメントとは、短期的には愛するという決定を 、長期の関係においては愛を維持す るような言質や約束などを含むものです。
コミットメントは恋愛関係おいては告白して付き合うといった口約束を、結婚においては家族を形成し維持しようという契約を意味します。
心理学の研究において、コミットメントは、「社交性」に負の重みを、「責任・真面目さ」には正の重みを示していたものの 、その影響は小さいものであったという結果になっています。
これは、コミットメントが高まると、愛する恋人や家族と過ごすことに時間が割かれる分、社交性が下がる側面はありますが、多数の人に手を出すのでなく、一人の人を愛するという責任感(真面目さ)が芽生えるという効果があるということです。
愛され願望のデメリット
冒頭で、現代は愛する事よりも「愛される」ことに重きを置かれている時代だと言いましたが、心理学の研究では、実は「愛される」ことを求める事には、以下の3つの非常に深刻なデメリットがあることがわかっています。
以下に詳しく説明していきます。
対人関係不安が高まる
「愛されたい」という受動的な態度から、自分を高めるのではなく、対象を独占しようとしたり、周囲の同性に嫉妬することが始まることによって、愛情の対象やその周囲の人との対人関係が不安定になります。
過度な承認欲求が生まれる
「愛されたい」と思うがあまり、自己を磨くのではなく、人に認めてもらうことを過度に求めてしまい、周囲から「かまってちゃん」と言われ、敬遠されるようになってしまう傾向があります。
精神的健康度が下がる
愛するという「能動的」な行為と対照的に、愛されるとは受動的な行為です。そのため、自分が“どうしたい”とか“どうする”ではなく、相手がどうしたいかばかりを気にし振り回されるような生活になります。
このような考え方で生活をしていると精神的に健康度が下がり、うつ傾向の場合に特に顕著に表れると言われています。
<結論>愛され文化に惑わされず愛そう
今回は、「愛する」という行為の意味とそのメリットについて、心理学的な知見を提供しました。まとめると以下の通りです。
この記事を読むことで、愛することが明確になり、メリットを知ることによって、家族・友達・異性を改めて愛してみようかなと思うようになったり、愛とどのように向き合えばよいのかについて知ることができたり、人生が豊かになります。
恋愛が苦手という方もいらっしゃるかもしれませんが、家族愛、推し活、ペット愛など愛の種類は様々あります。
ぜひ世の中の「愛され文化」に惑わされず、愛するということを意識して、より充実した生活を送ってください。
愛については、奥が深いので続編を執筆しようと思います!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
<参考文献>
金政祐司 2005 愛されることは愛することよりも重要か? : 愛すること、愛されることへの欲求と精神的健康、青年期の愛着スタイルとの関連 対人社会心理学研究 5 31-38,
金政 祐司 ・ 大坊 郁夫 2003 青年期の愛着スタイルが親密な異性関係に及ぼす影響 社会心理学研究19 巻 1 号 p. 59-76
金政 祐司 ・ 大坊 郁夫 2003 愛情の三角理論における3つの要素と親密な異性関係1 感情心理学研究 第10巻第1号11-24
Sternberg, R. J. 1988 Triangulating love. In R. J. Sternberg & M. L. Barnes (Eds.) , The psychology of love
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