愛するとは?心理学が解き明かす愛のカタチ7選
<はじめに> 心理学的な7つの愛のカタチを知ろう!?
こんにちは。臨床心理士のいちかです。
前回は、「愛される」願望を持つことのデメリットと「愛する」ことのメリットをお伝えいたしました。
愛するとは?心理学が解き明かす、愛することのメリット3選|いちか|臨床心理士 (note.com)
前回の記事をお読みいただき、愛すべき対象が見つかったとして、今度はどのように愛情を育ていけば良いか疑問が出てくるかもしれません。
しかし、心理学の分野では科学的に整理された「愛する」行為のタイプがあります。
これを知れば、あなたが愛情を向けた対象について、現在どのような愛情タイプにいるか知ることができ、これからどのような要素を求めていけばよいかが明確になります。
その結果、あなたがより愛を深めたい対象についてどのように接していけばよいか見通しが持て、「愛する」という行為が楽しくなります。
今回は、「愛する」という行為の主なものを7つを紹介しながら、大切な人との関係を今より一歩深める方法をご提供いたします。
「愛する」という行為7選
あなたが愛する対象に対して、何か物足りない、何かが違うと違和感を持つのには理由があります。以下にスタンバーグという心理学者の提唱する「愛の三角理論」における7つの愛のカタチを紹介します。この7つのタイプを理解することで、現状を知り、愛する相手に対してもう一歩愛を深めましょう。
以下に「愛の三角理論」の図を示します。これを見ていただきながら詳しく説明していきます。
友愛的な愛(親密さのみ)
スタンバーグは、この場合の友愛という言葉は軽蔑的な意味で使われていないと述べています。
親密性は、人が他の人と絆を感じ、温かさや親密さを感じる真の友情を特徴としますが、強烈な情熱や長期的なコミットメントはありません。
例えるならば、「ただの友だち関係」と言ったところです。
ここからもう一歩関係を進めたいなら、あなたの愛情を相手に伝えたることで、告白する(コミットメント)チャンスをうかがっていく必要があります。
島田紳助さんはこのような関係から一歩進めるときに
「さわやかに『恋人になってなんて言うつもりはないけど、あなたのことが好きになったかもしれない』と言って相手が重くならないように好意を伝えればいいんや」
と言っていました。そのような好意の伝え方をする段階かもしれませんね。
情熱的な愛(情熱のみ)
熱狂的な愛はしばしば「一目惚れ」として感じられます。しかし、愛の親密さやコミットメントの要素がない場合、熱狂的な愛は突然消えてしまうことがあります。
例えるならば「片思い」状態かもしれません。こちらも相手との愛情を一歩深めるならば、親密さを深めるために、顔を合わせる機会を増やしたり、相手との共通の話題を見つけたり、自分のプライベートな話を相手に伝えることで返報性の原理を利用したりすると良いかもしれません。
親密になってからコミットメントをはかると良い状態です。
空虚な愛(コミットメントのみ)
お見合い結婚でパートナーとなった夫婦が典型的ですが、時には、より強い愛が空虚な愛に変わることもあります。コミットメントは残っていますが、親密さや情熱は失われています。
例えば、「契約結婚」のような夫婦関係が当てはまるかもしれません。なんとなくスタートの聞こえが悪いですが、お見合い結婚などは実は離婚率は低くなく、コミットメントから始まる愛情も悪いものでは全くありません。
ここから一歩進めるためには、まずは意識的に相手の良いところや好きな事を知って一緒にすることで「親密性」を高め、そこから情熱が出てくることを待つというのもいいでしょう。
ロマンチックな愛(情熱+親密さ)
ロマンチックな恋人たちは、感情的に結ばれ(好きであるように)、情熱的な興奮を通じて身体的に結ばれています。
例えば、未成年の恋愛や不倫関係がここに当てはまるでしょう。
コミットメントが欠けているため、長期的な「婚姻関係」はもちろん、短期的な「愛する」という決定もせずに愛情を交換しようとする状態です。
昔から「恋は下心、愛は真心(真ん中に心)」と言ったものですが、愛というよりも恋の要素が色濃い状態とも言えます。
コミットメントすることによる、「社交性が犠牲になる」というデメリットが避けられ、双方に他の人との恋愛関係を持てる自由さがあります。
しかしお互いが「責任・真面目さ」を前提にしません。
そのため、幸せから一気に深刻な傷つき体験をする可能性があります。
特に若いときの恋愛はコミットメントが結びにくいため、傷つくことも多いですが、その情熱は美しくもあります。
大人の恋愛においても中山美穂さん主演の「サヨナライツカ」という映画を見ましたが、なんと美しく残酷な結果になるのだろうと胸が苦しくなりました。このような結末を意識するだけでも行動が変わっていくでしょう。
伴侶愛(親密さ+コミットメント)
伴侶愛は、関係から情熱が失われた結婚でよく見られますが、深い愛情とコミットメントが残っています。伴侶愛は、性的または肉体的欲求のない個人的な関係です。
それは友情よりも強く、コミットメントの追加要素のためです。家族間で共有される理想的な愛も伴侶愛の形態であり、深い友情または非性的だが友好的な関係で多くの時間を共有する人々の間にも存在します。
このような愛情のカタチは、結婚してある程度たった日本人夫婦に多いタイプなのではないでしょうか。心理学的にも強烈な恋愛感情はだいたい4年でなくなるという研究結果があります。
5年以上たった夫婦はお互いの愛情の維持のしかたについて考え直す必要があるということでしょう。
特に「情熱」の部分を高めるために、「パパ」「ママ」ではなく相手の名前を呼ぶ、子どもをおいて2人だけで食事をするなど恋愛関係のときに当たり前にしていたことを意識してする必要が出てきます。
愚かな愛(情熱+コミットメント)
愚かな愛は、親密さの安定化要因がなく、情熱によって主導されるコミットメントによって動機付けられた求婚や結婚で示されることがあります。
例えば「スピード婚」した夫婦などが挙げられます。このような夫婦は周囲も心配しがちですし、結婚の決断も早ければ離婚の決断も早いです。
しかし、行動が早いという長所があります。
親密さを深めるために、「結婚を控える、あきらめる」といった何かを我慢するというのは向きません。
入籍をする前に、2人で色々な活動をしたり、特に結婚前に同棲の経験がなければ1年間でも同棲してみようといった別のアクションを起こすという考え方が良いのかもしれません。
完全な愛(3要素全て)
完全な愛は、理想的な関係を表し、多くの人々が努力するが、明らかに少数の人しか達成することができない愛の完全な形態であると言われています。
実際、スタンバーグは、完全な愛を維持することが達成することよりもさらに難しいかもしれないと警告しています。
彼は愛の要素を行動に示していくことの重要性を強調しています。「表現がなければ、最高の愛でも死んでしまう」と彼は警告しています。
完全な愛は永続的ではない場合があります。たとえば、情熱が時間とともに失われた場合、友情愛に変わる可能性があります。
このように「完全な愛」は達成するのも維持するのもとても難しいと言われていますが、「完全な愛」を目指すことによって見えてくるものもあるのではないでしょうか?
たとえば、私も夫婦関係を長年維持していく中で、
「朝家を出る時はどんな状態でも玄関に行き、いってらっしゃいと言う。」「横並びの活動(ドライブか散歩)を意識的にする」
「妻の料理に関してはどんな時も美味しいと言う」
など、完全な愛を目指して日々のちょっとした工夫をしています。
もちろん、私が完全な愛を達成しているとは言えないかもしれませんが、これらのことで少しは近づいていることも実感しています。
<まとめ>完全な愛に一歩近づけよう
今回は、「愛する」という行為の主なもの7つを紹介しながら、大切な人との関係を今より一歩深める方法をご提供しました。
まとめると以下のようになります。
これを知れば、あなたが愛情を向けた対象について、現在どのような愛情タイプにいるか知ることができ、これからどのような要素を求めていけばよいかが明確になります。
その結果、あなたがより愛を深めたい対象についてどのように接していけばよいか見通しが持て、「愛する」という行為が楽しくなるでしょう。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
<参考文献>
Sternberg, R. J. 1988 Triangulating love. In R. J. Sternberg & M. L. Barnes (Eds.) , The psychology of love
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