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【必見】プロカウンセラーの応答の原則 5つ プラス1

本当に相手のためになる会話の応答とは

こんにちは。臨床心理士のいちかです。私は、カウンセラーとは別に、医療系の大学で「心理学」の講師もしております。

看護師や医療従事者などをはじめ、対人援助職をされている皆さん、
患者さんといい関係づくりができてくると会話をすることも増えてきます。
(関係づくりのコツについての記事はこちら↓)
コミュ障でもできる! プロカウンセラーの関係づくりのやり方|いちか|臨床心理士 (note.com)

その時「もっと上手に話を聞きたい」と思ったことはありませんか。
対人援助職をされている方は、よく「傾聴」が大切だと言われます。
傾聴とは、相手の話に寄り添って共感的に聴くことで、相手の自己理解や自己受容を促すことを目的としたものです。

傾聴は非常に基礎的で大切な技法ですが、実際にやってみると難しいこともあります。

例えば、相手の話が長くて退屈だったり、相手の意見に反対だったりする場合、どうしても話が進まなかったり、聞く側が耐えられなくなることも多いです。

ではどうしたら良いのでしょうか?
実は、傾聴だけではうまくいかないときに使える、カウンセラーの応答方法によって、よりスマートに話を聞くことができるのです。

これを知れば、傾聴だけでは話が展開しない会話がグッと進んだり、話を聞く側が過度なストレスを抱えずに集中して相手の話を聞くことができるようになります。

そこで今回はプロカウンセラーの応答の原則5つプラス1をお伝えしたいと思います。

カウンセラーの応答の原則5つプラス1

それでは、ここであなたに質問です。社会人であるあなたが、大学生の男の子から次のような相談を受けた時、なんと答えますか?
下の①~⑥からあなたの応答にもっとも近いものを選んでください。

「最近、何をしても心から楽しいとは患えないのです。原因は、就職のことなんです。私は不安なんです。就職しても、ちゃんと働けるかどうか、厳しい社会の中で生き残っていけるかどうか、自信がないんです。」

①そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。まじめにやればきっとやっていけますよ。
②就職する前から悩んでいても仕方がありません。
③あなたには、まだ就職したくないという気持ちがあるのかもしれませんね。
④情報誌で情報を集めたり、先輩や友人に聞いてみなさい。
⑤就職について、具体的にどんなことを考えているのか話してくれませんか。
⑥就職のことが心配で、何をしても楽しくないんですね。

回答できたでしょうか?
実は、この中の5つの応答が一般的によく使われる応答であり、それぞれ以下のようなテクニックとなっております。そして、残りの1つは、プロカウンセラーが意識的に用いる応答になります。

①     支持
②     意見
③     解釈
④     指示
⑤     質問
⑥     反映

これからそれぞれについて詳しく説明していきます。

支持

1つ目の「支持」は先ほどの悩みに対して「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。まじめにやればきっとやっていけますよ。」と応答するものです。

「支持」の応答は、クライエントの立場を是認し、なぐさめたり、不安を和らげたりしようとするものだと言えます。

特にカウンセリングの訓練を受けていない心ある人が選択しやすい応答ですが、相談者からの印象は6つの中で良くも悪くもないといった当たり障りのない応答と言えます。

雑談のような意味合いであれば最適な応答です。しかし、対人援助の場面では、もう一歩、相談者が話して良かった思える対応ができると良いでしょう。

意見

2つ目の「意見」は先ほどの悩みに対して「就職する前から悩んでいても仕方がありません。」と応答するものです。

「意見」の応答は、クライエントの問題を自分の価値基準で判断し、意見を述べているものだと言えます。

看護学生を対象にした研究でも、カウンセリングについての知識が十分でない一般の人が悩みの相談に応じる場合、意見的(評価的)応答がもっとも多くなっています。

このことは、相手に対して、何か参考になる自分の考えを述べなければならないと考えてしまうからだとのことです。

しかし、研究では相談者の印象は最も悪い結果となっています。あのような短い言葉のみで意見を言われると、上から目線に感じたり、アドバイスがズレていると感じるからです。

解釈

3つ目の「解釈」は先ほどの悩みに対して「あなたには、まだ就職したくないという気持ちがあるのかもしれませんね。」と応答するものです。

「解釈」の応答は、クライエントが言ったことを越えて、解釈したり、新しい意味を付加するものだと言えます。

この応答は「意見」の次に相談者の印象が悪い結果となっております。
なぜなら、この応答はもともと意見と区別されにくく、聞き手が意図している「相談者が述べた内容を越えて新しい意味や視点を付加する」ものとは受け取られていないからです。

実際、解釈は、カウンセリング領域では、クライエントの考え方とは異なる考え方や、異なる視点を提供するものとみなされるようになってきています。

指示

4つ目の「指示」は先ほどの悩みに対して「情報誌で情報を集めたり、先輩や友人に聞いてみなさい。」と応答するものです。

「指示」の応答は、解決に導くための助言を与えるもの、具体的にどうすればよいかを示すものだと言えます。

研究においては、相談者に特段悪い印象を与えたわけではありませんが、いい応答とも言えません。なぜならあの短い相談内容では問題の本質をつかんだわけではないのでアドバイスがズレる可能性があるからです。

質問

5つ目の「質問」は先ほどの悩みに対して「就職について、具体的にどんなことを考えているのか話してくれませんか。」と応答するものです。「質問」の応答は、クライエントからさらに事実や情報を得ようとするもの(質問形式でないものも含む)と言えます。

先ほどのような短い言葉で悩みが語られた場合、あいまいで不明な点が多いので、さらに相手に発言を促してより的確に相手を理解しようとすると考えるのが自然です。

質問の応答例が開かれた質問の形式を用いていることもあり、相談者の印象も良い望ましい応答だと言えます。プロカウンセラーも相手のことを深く知るための「手段」としてこの質問をよく使います。

反映

6つ目の「反映」は先ほどの悩みに対して「就職のことが心配で、何をしても楽しくないんですね。」と応答するものです。「反映」の応答こそ、訓練を受けないと自然には出てこない、本日お伝えしたかった「プラス1の応答」なんです。クライエントが言った事実や感情を繰り返したり、言いかえたり、要約したりするものです。(感情の反射と言ったりもします。)

この反映は、研究においても相談者の印象が最もよい応答です。そしてカウンセリングの訓練を受けないと自然には出てこないプロカウンセラーがおススメするプラス1の応答とも言えます。

先述した「質問」で状況理解を深め、そこででてきた(特に感情)の部分に焦点を当てて伝え返すと、相談者の内省が深まり、新たな気づきが生まれ、問題に対する新しい見方と対応方法が生まれることがあります。

<まとめ>カウンセラーの応答の原則とは

今回はプロカウンセラーの応答の原則5つプラス1をお伝えしました。
要約すると応答の原則は一般的なもので、支持・意見・解釈・指示・質問という5つがありました。

意見や解釈については相談者の印象が悪いので控えた方がよく、支持は悪くはないですが今一歩という感じでした。

プロカウンセラーとしておススメなのは「質問」で状況理解を深め「反映」の応答で本人の気持ちを深めることにより、相談者の内省が進んだり、新たな視点が本人から生まれる可能性があることを伝えました。

これを知れば、傾聴だけでは話が展開しない会話がグッと進んだり、話を聞く側が過度なストレスを抱えずに集中して相手の話を聞くことができるようになります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

<参考文献>


玉瀬 耕治ら 1991 カウンセラーの言語的応答の分類 奈良教育大学教育研究所紀要27巻 P103―114




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