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【レポート課題】日本の世界に誇るアニメーション映画の巨匠、宮崎駿と新海誠作品の比較

日本の世界に誇るサブカルチャーであるアニメーション映画は、1958年「白蛇伝」から今日に至るまで、莫大な数のアニメーション映画が作成された。日本のアニメーション映画の特徴は、ネイピア(参考文献1参照)によると、ディズニー映画は動きを表現することに注力したが、日本映画は元々漫画である静止画を紙芝居のように動かすことが特徴であり、その紙芝居の動く間合いなどでドラマ性を作っており、さらには海外と違って子供向けと限定されたものではなく、社会的なテーマをはじめ、実写映画に劣らない多彩な内容やテーマを扱い、子供だけに止まらない広い対象に向けたものだったと記述されている。特に、それぞれのアニメーション監督によって個性が突出しており、20世紀の代表格は、「風の谷のナウシカ」「となりのトトロ」「千と千尋の神隠し」など名作品が絶えない宮崎駿監督、世界に日本のアニメーション映画の影響を多大に与えた「AKIRA」の大友克洋監督であろう。一方で、21世紀に入り、日本のアニメーションや漫画が産業として大量に海外に輸出され、注目を浴びるようになった中、多くのアニメーション監督が活躍しているが、その中でも「新世紀エヴァンゲリオン」の庵野秀明監督(20世紀末から活躍しているが)、「天気の子」「君の名は」を代表作品とする新海誠監督、その他細田守監督などが挙げられる。今回は、20世紀の代表格である宮崎駿監督作品と、21世紀の気鋭の監督である新海誠監督作品を比較し、時代による世界の捉え方、主人公のキャラクターの違いなどを検討していきたい。
 まず、宮崎駿監督作品は、初期の「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」など壮大なファンタジー世界で繰り広げられる自立した思春期の主人公たちのリアリティのある振る舞いが特徴的である。その後「魔女の宅急便」「となりのトトロ」など、主人公が幼い年齢に移行するが、主人公のリアリティや自律性は変わらない。その後、「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」が宮崎駿の世界観の集大成として世界にも知られることとなるが、21世紀以降は若者育成に注力したからかそれ以上にインパクトのある作品は出ておらず、作風も自律性のある主人公は出てくるものの、やや子供向け、教訓や教育的要素が目立つ作品となっている。新海誠監督作品は、2010年頃までは現実世界の日常を扱うものも多く抒情的で個人的な作風となっているが、東日本大震災後を経ての「君の名は」「天気の子」は終末観あふれる壮大なファンタジーとなっていることが特徴的である(参考文献2)。2人の監督の代表作に共通するものは、「自然への向き合い方」をテーマにしていることが挙げられる。しかし、それぞれの監督の自然に対する解釈や扱いは違い、宮崎駿監督は「風の谷のナウシカ」「もののけ姫」でも顕著なように、自然は人間が制御できない圧倒的で荘厳なものであり、それらの理不尽な自然の中で人間は共生しながら逞しく生き延びるといった姿勢である。一方で新海誠作品では、「天気の子」では人間の祈りが天気を左右したり、「君の名は」では、隕石が落ちることを人間同士の愛で制御するといった、人間がコントロールする自然を描いており、両監督の自然に対する解釈は真逆である。
 また、登場人物の扱いについては、学童期から思春期の子供を主人公にすることが多いことは両監督とも同じであるが、宮崎駿監督作品の主人公はナウシカ、シータ、パズー、キキ、千尋、サン、アシタカなど全て男女ともに「自律的で、有能で、清らか」である。大人社会の中でも平気で渡り歩く勇気や度胸、覚悟が決まっている大人よりも大人らしい清々しい姿である。一方で、新海誠作品の主人公は、社会の枠組みにはまった思春期らしい、大人の庇護を必要とした、弱く、自律性の弱い、性的な側面も持った「普通の」男女であり、異質であるのは女性側に特殊能力を持っている点である。そういった意味で非常に人間臭い人間が多く登場し、「普通ではない特殊能力」を持つことでファンタジー世界として成立している。宮崎駿監督作品は、特殊能力を持たない主人公が(キキやシータは持っているがそれだけにより大きく世界を変えることはない)知恵と勇気で物語を動かしていると言える。
 これらを考えると、昨今の地震や津波、洪水、感染症といった人間の制御が及ばない自然災害が人々の命を奪い続ける中で、宮崎駿監督作品は20世紀から同様の世界観で、自然の脅威を警鐘しているが、新海誠監督作品は、現実には自然は制御できなかったという事実を経験しながらも、自然を人間がコントロールし世界を変えるというファンタジーを作り上げていることは皮肉である。また、描かれる主人公の子供たちが大人世界の中で特殊能力を持たない限り無力化している点も、現代の若者の生きにくさを表しているように考えられる。
 
 

参考文献
1.現代日本のアニメ 「AKIRA」から「千と千尋の神隠し」まで スーザン・J・ネイピア著 中公叢書 2002年
2. ぼくらがアニメを見る理由 2010年代アニメ時評 藤津亮太 フィルムアート社 2019年

後記 このレポートは珍しく80点(A評価)でした!いつもギリギリなのに!

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霞いちか@霞が関の国家公務員
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