睡眠不足は鼻のせい?鼻スッキリで夜ぐっすり
いびきに注意を向けよう
鼻の不調の1つに、「いびき」がありますが、いびきの先には「無呼吸」が存在する可能性がある、と高島氏は指摘します。一般的に、いびきや無呼吸を悪化させるのは、疲労や寝不足、飲酒などです。これらは、生活習慣を正すことで改善される見込みがあります。逆に、これらの原因に心当たりがなく、日常的にいびきをかいているとしたら、要注意です。
無呼吸とは、「寝ているときに10秒以上の気流停止(息が止まる状態)があること」と定義されます。舌や口蓋垂(のどちんこ)には、支えとなる骨や軟骨がないため、仰向けに寝たときに、ベチャッとつぶれてのどをふさぎ、無呼吸を引き起こすことがあるのです。無呼吸が1時間に5回以上起こるのであれば、「睡眠時無呼吸」とされます。高島氏は、日本の睡眠時無呼吸症候群の有病者は約400万人、いびきに悩んでいる人はその10倍の4000万人いると推測しています。
そして、いびきの原因の1つとされているのが、口呼吸です。「人は構造上、口呼吸になると舌の付け根が狭くなるため、いびきをかきやすく」なると、高島氏は書いています。つまり、人間にとって本来の呼吸は鼻呼吸なのです。睡眠時無呼吸を起こさないようにするためにも、鼻呼吸によって、のどが開きやすい状態を保つことが大切です。
POINT
人間の呼吸は鼻呼吸が基本。鼻呼吸がスムーズでないと、睡眠や生活に支障をきたすことがある
睡眠を改善する治療とは
それでは、どうしたら正しい鼻呼吸ができるようになるのでしょうか。高島氏が紹介している治療法は、例えば次のようなものです。
1.内服薬や点鼻薬
鼻水や鼻づまり、アレルギー性鼻炎など、一般的な鼻の症状の治療は、内服薬や点鼻薬を用いて行います。この治療でも鼻呼吸ができるようにならず、いびきや無呼吸が改善されない場合は、外科手術が検討される場合があります。
2.舌下免疫療法
舌下免疫療法は、アレルギーの原因となる物質を体内に取り込み症状を緩和するアレルゲン免疫療法の1つです。具体的には、舌の裏でタブレットを1分ほどかけて溶かします。これを1日1回、3年間継続すると、スギ花粉で70%、ダニアレルギーでは80~90%の治療効果が期待できるといいます。
3.鼻のレーザー治療
アレルギー性鼻炎による鼻づまりに効果を発揮し、しかも外来で行える日帰り治療のひとつにレーザー治療があります。アレルギーなどで腫れた鼻の中の粘膜を焼き、鼻のとおりをよくします。術後1週間から数週間で効果を感じる人が多く、効果が乏しい場合は追加治療が可能です。麻酔薬を利用するため、痛みはさほど感じないそうです。
4.CPAP(持続的陽圧呼吸)
「CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)」とは、睡眠時無呼吸症候群の治療法の1つです。「鼻マスク治療」とも呼ばれます。睡眠時に鼻にマスクをつけて風を送り、のどを圧力で押し広げて無呼吸状態を防ぎます。なお、CPAPの使用は鼻呼吸ができていることが前提であり、鼻がつまると使えません。鼻呼吸ができていない場合は、鼻呼吸のための治療が必要です。
5.0A(口腔内装具)
歯科医師が作る口腔内装具「Oral Appliance」を装着するのも、無呼吸治療法の1つです。下あごを前に出した受け口のような状態で寝ることで、舌や口蓋垂が落ち込みづらくなります。その結果、いびきをはじめ、軽症から中等症の無呼吸の改善が期待できるといいます。OAもCRAPと同じく鼻呼吸ができることを前提とした治療です。
POINT
睡眠改善の治療には、鼻呼吸を促す「内服薬や点鼻薬」「舌下免疫療法」「レーザー治療」や、無呼吸を防ぐ「CPAP」「OA」などがある
家庭でできる鼻の治療法
続いて、家庭でもできる鼻の治療法の紹介です。
1.鼻洗浄
鼻の中を洗浄液で洗い、鼻水や雑菌を口や鼻から排出します。鼻をかんでもなかなか出てこないような鼻水を取り除くのに効果的です。また風邪の予防効果も期待できます。ポンプ式の容器で鼻へ洗浄液を送るタイプの鼻洗浄用品が市販されています。
2.鼻スプレー
鼻洗浄ができない外出先では、保湿用の鼻スプレーが便利です。特に花粉症の人は、鼻スプレーをしてから鼻をかむと、吸い込んだ花粉を外に出すことができ、症状が楽になるそうです。
3.いびきテープ
いびきテープとは、口にテープを貼って鼻呼吸を促すもので、多くの商品が市販されています。テープといっても、力を入れれば簡単に外れる程度の強さのものです。睡眠時も安心して使用できます。
POINT
市販されている「鼻洗浄」「鼻スプレー」「いびきテープ」などを利用することで、家庭でも鼻のとおりを改善できる
※参考文献:『専門医が教える鼻と睡眠の深い関係 鼻スッキリで夜ぐっすり』(高島雅之著/クロスメディア・パブリッシング)2021年12月出版