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人は如何にして差別をするのか 「レイシズムを解剖する 在日コリアンへの偏見とインターネット」書評 著:高史明
社会心理学者、高史明さんの本。博士論文をベースに書籍にしたという、ガチの専門書。
この本を読んで、大きく2つのことが勉強になった。
まず、一つはTwitterというSNSを使ってどのような研究ができるのか、その方法を知ることができたこと。
TwitterでAPI(そういうプログラミングツールみたいなもの)を使い、差別的なツイートを収集し、その中身を整理し、どのような差別が行われているかを検証する。
Twitterという場が研究手段としてどのように使えるか、そのお手本を示してくれている。
2つ目は、読みながらにして、今までアカデミズムで「差別」についてどのような議論が行われてきたのか、その知見が得られたこと。
この本では韓国・中国人差別を題材に扱っているが、レイシズム(人種主義)とはそれだけに限らない。
アメリカにおける黒人差別であったり、世界中様々なところで行われている。
例えば、この本では古典的レイシズムと現代的レイシズムという2つの概念を紹介している。
古典的レイシズムは、「黒人は劣っている」など、民族や人種そのものが劣っているとする概念。
一方、現代的レイシズムとは、実際には差別があるにも関わらず、差別はないと行ったり、被差別者は努力が足りない、不当に優遇されていると批判する差別である。
他にも、この本ではレイシズムと社会支配志向、右翼的権威主義との相関関係なども論じている。
要するに権力に追従的だったり、社会が公正で正しいと思っているほど、差別的な志向を持ちやすいという話。
おそらく、この研究に向けられる批判として、Twitterで社会の何がわかるのか、といったものがあるだろう。
そのような批判への回答としては、Twitterを研究したら、Twitterのことがわかる。以上、でほとんど話は終わる。
もう一言加えておくと、Twitterの登場によって人々の言説をある一定の数以上、客観的な方法で調査できるようになった意義は、認める部分があるだろう、ということだ。
社会全体のことがわからない、と言われたら、今まで社会全体のことがわかった研究が果たしてあるのか、と問い返せば良いと思う。
とにかく、誠実かつ精度の高い書物であったと思う。
ガチの専門書のため、読むのに骨は折れます(笑)。
挑戦したい方はどうぞ。