橙乃ままれ『ログ・ホライズン』の「ネットっぽさ」と「ウェブ小説らしくなさ」
『ログ・ホライズン』は、数あるウェブ小説の中でもいち早くアニメ化された作品のひとつだった。
NHKでアニメ化された橙乃ままれ『ログ・ホライズン』は、「小説家になろう」に連載が開始されたあとエンターブレインから書籍化がスタート。アニメ版のストーリーは原作に比較的忠実だった(もちろん原作の方が描写は細かく丁寧だしエグい部分もあるが)。
しかし『ログホラ』が小説投稿サイト「小説家になろう」の“典型的”な作品かと言うと……そうではなかったと思う。
もちろん「ゲームプレイ中にそのゲーム世界らしきところに飛ばされてしまう」という導入は、よくある。
しかし一回(一話分)の投稿ボリュームが1万字近くと多めであり、起承転結/三幕構成を明確に意識したプロット、そしてそれでも人気である点などは比較的珍しい。
さらに話の内容面、テーマから言っても、ウェブ小説(というか「なろう」)のメインストリームとは少し違うものだと感じる。
“オンラインゲーム内では様々な人間が存在する。人間が居れば、人間関係も当然発生する。そこには綺麗な関係だけではなく、汚い関係も無数に存在して、それは中学生だったシロエには刺激が強かった”
とは『ログホラ』の一節だが、ネットは/人間は、よくもわるくも多様である。それがゆえに生じるめんどうくささや暴力をわかっていてなお、『ログホラ』は、他者への寛容さを説いていた。
“人間は多様だが、ひとりひとりは視野狭窄”。
それが露呈する世界の中で生まれるしがらみや理不尽に充ちたコンフリクト。こうしたものを解決しようとする粘り強い交渉を、キャラクターたちのすこしずつの歩みを描く。
『ログホラ』がもっとも「ネットっぽい」点とは、こういう部分なんじゃないか、と個人的には思う。
しかしそれが「ウェブ小説っぽい」のか? と言うと……どうでしょうかね?
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