「5番・高橋周平」の格
遅ればせながら、明けましておめでとうございます。個人的には追われ続けた論文提出イベントがギリギリアディショナルタイム提出でなんとか終わり、精神衛生はすこぶる良いこの頃です。まあこの元気なうちに書きたかったことを書いておこうと思った次第でして、徒然なるままに書いていこうじゃないかと思います。
再燃する中日の3番打者問題
私が絶賛していた「俺のアルモンテ」ことソイロ・アルモンテが中日を自由契約となり、韓国リーグへと移籍することとなりました。そしてそれと同時に中日の2021シーズンを鑑みる中で「3番打者どうすんねん問題」が再燃しているように思います。
故障こそありましたが、出場すれば打率3割超をマークし、左ではアベレージヒッター、右では大砲だった彼が抜けたのですから当然と言えば当然でしょう。私は今でも「ガーバーが守備位置的に融通利きそうなんだから両翼を平田、アルモンテ、ガーバー、福田で流動的に使えばよかったんと違うん」と中日フロントに問い合わせたい気持ちでいっぱいです。あとは投打の主軸、大野ビシエドが元気な間に勝負をかけにいかずに何考えてんだとも思いますが。
まあ今そんなことを言っても仕方ないですし、何よりこのnoteの趣旨が変わりそうなのでこの辺にしておきます。
そういう経緯で、来季の3番は誰が打つんだ、という問題に関しては様々な意見があることと思います。去年育成から支配下登録され、ウン年ぶりの外国人捕手として話題をさらったアリエル・マルティネスだったり、2020は不調に沈んだ福田が復権するだったり。中には高橋周平を3番に上げようという意見もあるようですが、個人的にはビシエドと高橋周平。この並びは余程のことがない限り崩すべきではないと考えています。なぜそう考えているのかを今回は書き連ねていきます。
2/5番をこなせる打者の資質
野球ツイッタラー界ではもはや浸透しきったと言われる2/5番の打者の重要性。端的に言えば状況の変化に対応しうる打撃の幅が求められるという打順上でのポジションなのですが、一応微妙に違うっちゃ違います。
2番:盗塁待ち等ランナー有の刻々と変わる状況と制約の中で最善の選択をする野球選手としての頭脳、それを実行する技術
5番:チャンスを一撃で仕留めきる「打点力」、また状況次第では一発を狙えるパワーがあると尚良し
といった感じでしょうか。一言で言えば2番に欲しいのは制約をものともしない対応力、5番はどんな形でもいいから得点をもぎ取ってくれる打点力といった感じでしょうか。「打点力とはなんぞや」と聞かれたら、時には強打、時には軽打といったスイングの調節や、様々な球種への幅広く対応できることを挙げます。2アウト2塁で無駄に振り回さず軽打でタイムリーを打ってくれる打者、1アウト3塁できっちり犠牲フライを打ってくれる打者と言った方がイメージもしやすいかと思います。ちなみに現日本球界で最高の2/5番型の打者はソフトバンク・中村晃だと思っています。
とまあ2/5番について話したところで中日の話しに戻りますが、今の中日にはこの2/5番型の打者が極端に少ないと感じています。現時点で私が考える中日の2/5番打者は、高橋周平と平田良介の2人のみです。ここに一番の理由があり、絶対的4番・ビシエドの後ろを打つ5番打者は私の中では高橋周平しかありえないのです。
高橋周平の打撃の質① 安定した高水準のBAPIP
なぜビシエドの後は高橋周平でなければならないのか、その打撃の質について列挙していきます。まずはBAPIPの安定した高さ。定義の上ではインプレー時の打率を指します。簡単に言えば、ホームランや三振など、グラウンド内に飛んでいない打席結果を除外した際の打率です。通説ではどんな打者も.300に収束するとされています。
しかし私はこの収束理論に異論を唱えているわけです。なぜかというと、打撃傾向でそんなの変わるのが当たり前だからです。
いやー雑だな!って言われるかもしんないけど、率残せる打者って打球速くてライナーも多いんだよね。
今、心の中あるいは声に出して「雑だな!」とツッコんだあなた、オードリーのオールナイトニッポンを聴いていますね?これが、メンタリズムです。ちなみに、「雑だな!もっと詳しく言えや!」と言葉を足してツッコんだあなたは、謹慎です。
とまあ茶番はこれくらいにして、イメージしてもらえれば簡単かと思います。打球が速ければゴロでも内野に捕られにくいですし、ライナーはフライなどと比較してもヒットになりやすいでしょう。BAPIPを高水準で維持できる打者とは、「投球に対して強いコンタクトで打球を放ち、また打球の傾向としてライナーが多い打者」であると考えています。
そこで、過去3年の高橋周平のBAPIPを振り返ってみましょう。
2018:.295
2019:.336
2020:.353
2018シーズンこそ高くはありませんが、主将就任&サード固定になってからのこの2年は高い数字を維持できていると言えます。そしてその過去2年の打球傾向として、
2019: Hard%→37.1%
LD%→11.0%
2020: Hard%→42.5%
LD%→13.5%
という数字が出ています。
・Hard%においては『angtime(フライ/ライナー/フライナーは滞空時間or打球を取るまで、ゴロは打球を取るor内野の間を抜けた時間)を基準にしてSoft%/Mid%/Hard%を分類』
・LD%においては『LD%=ライナー打球÷(ライナー打球+ゴロ打球+フライ打球)ファウルを除く打球(ファウルフライは含む)に占めるライナー打球の割合』
と算出元である1.02さんに明記されています
さて、この数字の水準はいかほどの物なのか。試しに全球団の規定到達打者の中で、この2つのスタッツにおいて高橋周平と同程度の数字を残している選手はいるのでしょうか。基準としてセ・リーグにおいてHard% 30%以上、LD% 10%以上を記録している打者はいるのかを探してみます。(規定到達者のみに限っているのは、通年打撃の質を維持できているかというフィルターにもなりうるかと思いますが、規定未達の打者のデータ閲覧は課金が必要でそれが嫌だというのが大きいです)
2019:De→ソト、筒香、神里
ヤ→青木
広→鈴木誠、會沢
神→(糸井)
中→大島、高橋周
巨→亀井
2020:De→ソト、梶谷
ヤ→村上、青木、坂口
広→松山(鈴木誠、堂林)
中→高橋周
巨→丸
こんな感じになりました。()入りの選手はHard%或いはLD%が1%以内未達ということで載せてあります。坂本や山田哲人の名前が入っていませんが、おそらく彼らはフライヒッターであることが理由として挙げられそうです。坂本選手に関してはHard%は連続で40%を超える数字を残しているので、方面は違いますが素晴らしい打撃の質と言えるでしょうね。そして、こうみるとそういえば活躍してたなって面子が顔を揃えてますよね。打率という観点のみで見てみると、両年ともにここに挙げた選手が5人ずつトップ10にランクインしています。適当に設定したボーダーながら2019-2020の2年間連続でこれを達成したのは鈴木誠也、青木宣親、そして高橋周平のみ。なんとなくこの数値は打撃の質を測るのに有用なのではないかと自分では感じています。
ということでスタッツを見てきたわけですが、高橋周平のBAPIPが安定して高いのは決してラッキーではないであろうことが分かったのではないでしょうか。強いコンタクトで高速かつライナー性の打球を多く放つ。こうした打球を打てる打者はある程度計算できます。その計算が立つことが怖さにつながり、4番を安易に歩かせられないことにつながると考えます。
高橋周平の打撃の質② 広い対応力
ポイントゲッターたるもの幅広い対応力が求められるわけですが、2020年の高橋周平は特定の球種に対して苦手というものがほぼなく、広い対応力を見せていました。まずまた1.02さんからの引用ですが、w○○といった指標を出します。これはある球種に対する得点貢献を指し、おそらくその球種を打って得点につながった場合、その数値が上がるというものです。これに関して、高橋周平が2020にマイナスを出した球種はスライダーのみ。しかもそのマイナスも-1.6であり、全く打てなかったというわけではありません。2020年の高橋周平はほぼ全ての球種において得点に対する貢献を生み出していたと言えます。
または球種別の打率に関して。ツーシーム、チェンジアップといった球種に関してはそこまでの数字は残りませんでしたが、その他の球種に関しては全て打率.300以上を記録。単純な打率の面からも苦手な球種は少なかったと言えそうです。
そして特筆すべきは、対フォーク、スプリット系の数字が飛びぬけて良かったことです。これについてはシーズン中から感じていました↓
ストレートはポイントではじきつつ、落ちる球等には少し前で捌く印象でセンター~ライトに運んでいくといった形です。
それ系の個人的お気に入りを挙げました。打率で言えば
フォーク:.343
スプリット:.444
カットボール:.367
と近年増えてきていると考えられる球種に対して高い数字を残しています。ピンチでは安易にストレートを投げてくれる確率も低くなるでしょうし、この対応力はポイントゲッターとして必須と言えるでしょう。また、こうしたウイニングショットの類の対応力があることによって、2ストライク時の打率も残ると考えています。
あとは球種別の話からは逸れますが、左右どちらの投手からも大きな偏りなく打てているということも大きいと思います(対右は打率.308、対左は打率.282でした)。
じゃあなんで打点少ないねんといった意見に対する反論というか回答
2020年の高橋周平の打点は46。確かに多い数字ではありません。そして阿部寿樹の打点は61。こっちの方が多いじゃんという意見があるかもしれません。しかし打点というのはホームランを除き一人では稼げない数字な訳で、大部分は当該打者の前を打つ打者の出塁能力に依存します。
昨年の中日打線は大島こそ好調だったものの2番京田の不振(というより2番にはまだ力量が足りないと思っている)と3番打者の不在(アルモンテのケガ、平田、福田の不調)によって大島とビシエド、周平の二人が離れすぎていました。また、ビシエドも例年ほどの成績は残せず、復調の兆しを見せたかと思えばデッドボールの繰り返しで最後は離脱とツキのないシーズンでした(しかし81打点を稼いだのはさすがの一言である)。こうした要因から、そもそも得点圏の打席数が少なかったと推測できます。高橋周平の得点圏打席数は95に対して阿部寿樹の得点圏打席数は116。20打席以上も違う訳で、単純に比較はできないでしょう。事実得点圏でも打率.300以上は記録しており、チャンスに弱いということではないと思います。
なぜビシエドの後は高橋周平でなくてはならないのか
ようやく本題に来た感があります。昨年は不本意な成績に沈んだとはいえ、ビシエドは間違いなく今の中日打線の柱であり、現状彼がいなくては打線組みそのものに支障が出ます。それはシーズン終盤、ビシエドが離脱した時の打線の迫力のなさから見ても自明でしょう。そして中日としては相手バッテリーにビシエドと勝負してもらわなければなりません。その為にはビシエドの後には好打者がいなければならないのです。
これは昨年度の敬遠数ランキングです。敬遠される打者は勿論良い打者、率も長打も残せる打者であることが考えられます。しかしこの敬遠される場合には後ろの打者という要素も絡んでいると考えています。オリックス吉田とソフトバンク柳田は共に球界を代表する打者で、敬遠が多いのもある種当然と言えるでしょう。その二人の敬遠数が10以上も違うのは後ろの打者の力量も大きいのではないでしょうか。ソフトバンクは選手層が球界ナンバーワンで、柳田の後ろは中村晃或いはグラシアルがいることが多かったように思います。この二人も怖い打者で柳田を歩かせてこの二人と勝負するというわけにもいきません。しかしオリックスは、ジョーンズ、ロドリゲスの両助っ人が奮わず、吉田一人が孤立していた印象があります(モヤが合流してからはマシになった気も)。そう考えると、このランキングにビシエドが入っていないのは素晴らしいの一言です。
ビシエドを歩かせるという手段を安易にとらせず、その安定した打撃の質でチームに貢献する、それが高橋周平の真の価値だったのではないでしょうか。
終わり~2021の展望を添えて~
とまあこの記事を通して如何に高橋周平が中日打線にとって重要な存在かを書き連ねてきました。とはいえここで満足という訳でもありません。ここから上積みが欲しいのはやはり長打力。昨年は短縮シーズンとはいえ本塁打が一桁に留まりました。一要因としては主軸としての責任感などから確実さをより求めたなどということが考えられますが、理想としてはフルシーズンでの本塁打数15~20は欲しいところ。阪神・スアレスから放った起死回生のサヨナラ本塁打から見ても分かるように、決してパワーレスという訳でもないと思われます。
理想としてはランナー有や接戦の状況では確実性を強めて幅広く対応、ランナー無し等狙っていい場面では長打を積極的に狙っていく引き出しの使い分けを見たいところ。OPSも.850前後くらいの数字は期待したいですね。
そして打線の件について。冒頭で中日において2/5番をこなせるのは平田と高橋周平の2人だと言及しましたが、平田が5番では駄目なのか?という意見について見解を述べていこうと思います。平田も同じく打席における対応力はありますが、平田は更に卓越した走塁能力を備えています。それについてはこちらで言及してます。効率よく得点するためには、やはりその平田を塁においた状態でビシエド、高橋周平の2人に打席に入ってもらいたいところ。なので平田じゃダメ、というよりは走塁能力を生かすためには前を打ってもらった方がいいだろうという適材適所的な考えです。
最後は打線組みについて言及して終わろうと思います。1番大島はほぼ確定として、昨年は2,3番に問題を抱えることが多々ありました。その2枠を福田、平田、ガーバー、アリエルマルティネス等で十分に埋めることができるのであれば問題はありません。しかし、平田は離脱もままあり、福田も故障、調子の面で通年そのポジションを全うできる可能性はそこまで高くないと考えています。新外国人のガーバーに今から信用を置きすぎるのもリスクマネジメント的にどうなんだという思いがあります。アリエルならばやってくれるという希望的観測は出来ますが、捕手という守備位置の兼ね合いがあります。外野起用もアリとは思いますがそのためには練習期間が必要で、開幕と同時にそうした起用はおそらく困難です。また、五輪が予定通り開催されればその期間は離脱を余儀なくされることから、彼に1年頼るというのも難しい話です。
であれば、高橋周平を前に持ってくるよりもビシエドの打順を繰り上げてしまうのも一つの有効な手立てであると考えます。単純に大島とビシエドが遠すぎるならば3番に上げてしまえばいい。大島‐(平田ガーバーetc)‐ビシエド‐高橋周平の並びですね。
といった感じです。個人的には○○は何番!を決めてしまうよりもこの2人は繋げておく、というプランの方が歩かせず勝負を強いるという面で機能すると思われますし、また○○は4番でなければ~という固定観念も起きづらく相手や自チームの戦力に応じてフレキシブルな打線構築が為せるのではないでしょうか。
打率3割をクリアし、打者としての箔は間違いなく付いたと言って良いでしょう。OPS等の指標もありますがやはり「打率3割」という言葉は重みがあり相手バッテリーも「3割打者・高橋周平」と警戒をより強めることと思います。高橋周平の更なる飛躍を期待して、この駄文を締めくくろうと思います。ここまで読んでくれた方はありがとうございました。この記事のサムネイルに対して「いや高橋周平ゲットしてないんかい!」とツッコんでくれたあなたにはイッポンを差し上げます。
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