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お腹が鳴ったので書く原動力について考えてみる。


完成した小説と完成しなかった小説、ふたつの間にはどんな違いがあるんだろう。

小説を書き始めて、もう片手では足りない年数が立った。その歳月の中で、とても立派とは言えないけれど、何本かの小説を完成させてきた。だけど完成した物語の裏側には、無数の完成しなかった物語がある。

物語終盤で挫折してしまったもの、途中で書き飽きてしまったもの、そもそも書き出しでつまづいてしまったもの、無数にあげられる。週末に作る唐揚げみたいに、いくらでもあげられる。

しかし書き上げられた物とそれらとにどんな違いがあるかと考えてみると、これが案外難しい。

私が小説を書くとき最初に思い浮かぶのは、ある1つのシーンだ。こんな場面を描きたい、こんな感情を描きたい、そういう気持ちが湧いたとき、私はとても書きたくなる。と言うより場面が先に浮かぶものだから、エッセイにするとか音声としてしゃべるとか言うような選択肢はほとんどないと言っても良い。頭の中で何か創作をしようと思った時、その手段がほとんど小説として一本化されているみたいだ。

だから常に書きたいことは尽きないのだけど、それでもやっぱり書きあげられるものと断念するものがある。アイデアの出所は全てわたしの頭の中というスタートラインは一緒なのに、どこでそれが違ってきてしまうんだろう。それがもしもわかったなら、飲んだ後にそのコーヒー牛乳が賞味期限切れだったと気づくようなこともないのにね。

そう思って先日買ったまるごとバナナを食べながら考えてみたんだけど、やっぱりうまい答えは見つからなかった。

そこで今書いている小説について考えてみる。どうしてこれを書こうと思ったんだろう、このアイデアを採用しようと思ったんだろう。考えてみたんだけど、これまた決定打になるようなものがなくて、そもそもわたしはこのテーマで書き出して良いのだろうかと悩んでいたことに気がついた。そもそもこの小説を引き合いに出したのが良くなかったわけだ。

だけど今更変えようと言う気にもなれない保守的なわたしは、じゃあそもそもどうして最初はこれが良いと思ったんだろう、と考えてみる。なんだか質問に質問を重ねるようだけど、こうなってみて初めてわたしにとって何が1番大事なのかが少しだけ見えてきた。

これは備忘録なのであまりドラマチックな書き方はできないけれど、自分が「これは切実な問題だ」と心底思える事柄があるかどうかにかかっているのかもしれない。

話は少しズレるが、私は自分のことを小説に書く、いわゆる私小説的なものを書こうと思った事は1度もない。

ジャンルとしてはとても好きだけど、私の人生はエンタメにできるほど劇的じゃあないし、何なら安定した生活が好きだ。老後には静かな郊外の一軒家で猫に囲まれ、ゆっくりコトコトとビーフシチューを煮込む生活が理想。

だからあんまり刺激的なものが私のこれからに配置されても困るのだけど、そんな保守的な人間でも小説に共感することはいくらでもある。たとえばジェットコースターのように360°回転のコースを縦横無尽に爆走する物語であっても、共感が尽きることはない。

それはきっと共感というのが環境や立場にそれほど左右されない特性があるからかもしれない。

例えば私は今26歳の地方に住んでいるしがないOL、だけど一度物語の中の世界に入れば、異世界で身分違いの恋に身を焦がす女性になることもできる。主人公に自分を投影する、と言うよりも、その女性が感じているであろう葛藤(恋の苦しみ、破壊衝動にも似た愛)の中で、1つでも共感のタネを見つけられれば、読み手のわたしは簡単に没頭してしまうからだ。

これを書き手のわたし側から考えるなら、書いていて1つでも共感のタネを見つけられれば、案外簡単に書く力が湧いてくる。それが自分にとって「切実な問題」であるほど、その力は強大だ。

性別が違ってもいい、住んでいる国が違ってもいい、そんな一つ一つの条件は違っていても感情が共有できるなら、それはすなわち書く原動力になる。一度でも心から溢れ出したような気持ちを主題にできたら、それだけで最後まで書ききれる。

逆に言えば、そういう強烈に原動力となる感情がなければ漫然とした作品になるし、もしくはクライマックスを迎えずに終わる。そうやって何度も名もなきWordファイルを作ってきた。

そこのところをちゃんとわかっていなかったのに、よくここまで小説を書いて生きて来れたもんだ。自分で自分に感心してしまうほど、わたしは私のことをまだよくわかっていないのかもしれない。ど深夜にコンビニに走るほど、生クリームの乗った善哉が好きだってことも、最近になって知った。

今年はもう少し自分の好みや傾向、小説の書き方、自分なりのやり方を把握できたらいいなと思う。そんな今日この頃だ。

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