おやすみの前のおしゃべり【シンプルコーデと年の功のお話】
となりの席のお姉さまのコーディネートが気になっている。
テーマはシンプルisベスト。
白いポロシャツにベージュのカーディガン、ボトムはデニムでカラーはネイビーという一見地味にも思えるアイテムばかり重ねている。
なのに全然地味に見えない。それどころか彼女が身に着けると華やかな大人ファッションにすら見える不思議。
きっとわたしが同じものを着ても、彼女のようにオシャレには見えないと思う。わたしは顔立ちが地味目だからシンプルなものを身に着けようものなら、地味+地味=透明人間という図式になって、街のどこかには必ずいるなんてことない埋もれたファッションになってしまうだろう。
しかし彼女が着れば、たちまち服が呼吸を始める。繊維の一本一本が美しく輝き、まるで天女の羽衣のように…というのはさすがに言い過ぎだけれど、お姉さまのコーデにはそのくらいの憧れがあった。あれはきっと、自分を知り尽くした人だけができる年の功というオシャレなのかもしれない。
「年の功」というと嫌がる方も多いかもしれないけれど、わたしは確かにそういうものがある、と密かに確信している。
もちろん同年代の子にもオシャレで素敵な人はたくさんいるけれど、憧れるのはやっぱり30代40代の洗練された女性。一枚布のワンピース、単色のカーディガン、麻の入ったスカート、それらさらっと身に着けて、シンプルが何よりの装飾だと教えてくれる人たちが眩しいのだ。
わたしも、いつかそうなりたい。
足し算ばかりではなく、引き算を覚えたいい大人になりたい。
となりの席のお姉さまを見ていると、そう感じるのだ。
そう目を輝かせた次の日、お姉さまのコーディネートは光沢のある水色のカラーシャツ、おろしたてでピリっと糊のきいた白いパンツ、大ぶりのゴールドのピアス。
これはもしやとなりのお姉さまが美しいだけなのでは?
と思いつつ、明日も働く金曜日。