一福千遥

趣味でのんびりと書き物をしています。 こちらはすこし長めの小説メインで置いてます。どうぞよろしくお願いします。 ※フォローなどはご自由にどうぞ。 ※ネタが被ったらごめんなさい…… ※平穏不穏問わず、ここで書かれている世界観はすべて架空のものです。

一福千遥

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マガジン

  • Novelber

    綺想編纂館(朧)様の企画「Novelber」への参加作品を置いています。秋の夜長、ひとときなりと共に過ごしていただけましたなら幸いです。

最近の記事

遅ればせながら、「薄き緑のなごり夢」に重ねてのスキをありがとうございます! ただいま、チョコミントアイスを絶賛探し中です。

    • 「薄き緑のなごり夢」に、スキをたくさんありがとうございます! チョコミントアイスをゆっくり食べて、文披31題に寄せたちいさな物語のネタを練ります。

      • 薄き緑のなごり夢

         ──あのひと、今日も来てる。  潮泊の東の港の奥にある喫茶店、その大窓をちらちらと窺い見ている少年がいる。まだ薄くてちいさな背中からは、待ちびとの姿を見つけたこころの声がコウにまで聞こえてきそうに強張っていた。今自分では珍しい学帽の徽章と、半袖の白いワイシャツの左袖に『潮泊』とある。ということは、ここにひとつきりしかない中学校の生徒か、とコウは見て取る。  赤味のつよい紫の日除けテントにも、ニスが落ちて煤けた扉にも店の名は記されてない。ただ、昔の映画でよく見かけるような店の

        • 遅くなってしまってごめんなさい! 文披31題参加作へのスキをありがとうございます! 8月に突入してしまいましたが、今年はなるたけ、気がすむまで書いていきますので、よろしければ引き続きおつきあいくださいませ。

        • 遅ればせながら、「薄き緑のなごり夢」に重ねてのスキをありがとうございます! ただいま、チョコミントアイスを絶賛探し中です。

        • 「薄き緑のなごり夢」に、スキをたくさんありがとうございます! チョコミントアイスをゆっくり食べて、文披31題に寄せたちいさな物語のネタを練ります。

        • 薄き緑のなごり夢

        • 遅くなってしまってごめんなさい! 文披31題参加作へのスキをありがとうございます! 8月に突入してしまいましたが、今年はなるたけ、気がすむまで書いていきますので、よろしければ引き続きおつきあいくださいませ。

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          30本

        記事

          術の背

           陽射し避けのプラタナスがくたびれ気味に葉をひろげるなか、鳴き交わす蝉の声。あ、蝉の声ってそれぞれ違うんだ、とコウが思ったと同時に、視界がぱっ、とひらけた。  護岸のコンクリートがかっちりと覆い、銀灰色の武骨な倉庫が線を引いたようにかっきりと並んでいる港の景色に、コウの口からほほう、と声がこぼれた。潮泊にやってきてからこれまでに、コウは西と南の港を見てきたが、ちいさくてのんびりとした──と同時に、時代の流れからはあきらかに置いていかれている、と思っていた。  しかし今、コウが

          文披31題参加作へのスキをありがとうございます! 時に静かで時にドタバタ、夏模様をお楽しみいただけましたら幸いです! ……とはいえ、更新が遅いところはごめんなさい……

          文披31題参加作へのスキをありがとうございます! 時に静かで時にドタバタ、夏模様をお楽しみいただけましたら幸いです! ……とはいえ、更新が遅いところはごめんなさい……

          散り花の白

          「これが最後の一本、か……」  シオミツの入口にある、かつては代書屋があったと聞く空き地にコウがテントを張り、五日が経つ。桐の箱に納められている線香は、もうとうに一本きりとなっていたが、それでもコウは火を点けられずにいた。 この一本に火を点け、すべて灰になれば、それはシオミツからの立ち去り時を意味する。  朝な夕なにあらゆる情の名残がかぎろうシオミツは、もはや昔日の栄の痕跡しか残らない場所であろうとも、たしかにあんまり長居すべきではないのだろう、そうコウは感じている。だが──

          散り花の白

          雑貨店にて

           ──つい十数分前まで、軒下で雨宿りをしながら昔語りを聞いていたのが嘘みたいだ。  雷雨一過の快晴のもとをしばし歩き、コウは雑貨屋に辿り着いた。  西の港と南の港との、ちょうど真ん中にある木造のその店は、『雑貨取扱』と右から左に読む看板は掲げているものの、緑と黄色の縞模様の庇はとうに褪せてすすけていて、最初は空き家なのかとコウは思った。しかし見ていると、ちらりほらりながら人の出入りもあるし、木枠に曇り硝子が嵌められた引き戸の向こうからは、かすかながら、ぱちぱちと何かが鳴る音が

          雷聲ふさぎの

          「おお、また雨がざあざあはしってきて」 「雷も引き連れてきて、まあずいぶんとハデに暴れてくれるぜ」  南の港に向けてひらけた商店街へと、コウが食料の買い出しに向かうその途上で、唐突に湧いていた黒雲からどう、と雨が降りつけてきた。間一髪、コウは空き店の軒先に駆け込んでいたが──夏の日除けにいくらか庇を長く取っている軒先では、ふたり連れの老爺が、くらぐらとさかる雲がひろがりゆく空を見上げている。 「今年はよくよく海から雷が来るねえ、千ちゃん」 「なぁに金ちゃん、ここで雷ゴロゴロ雨

          雷聲ふさぎの

          遅くなりましたが、文披31題参加小説へのスキをありがとうございます! マイペース更新にも程がありますが、ひととき、お楽しみいただけましたなら幸いです。

          遅くなりましたが、文披31題参加小説へのスキをありがとうございます! マイペース更新にも程がありますが、ひととき、お楽しみいただけましたなら幸いです。

          こごりふみ

          「……さすがにシオミツのど真ん中にテント張れるほど、肝がすわってるワケでなし」  南から左に曲がり、シオミツへと足を踏み入れるその三軒分手前で見つけた、高台に向かって細長い空き地に、コウはネイビーブルーのテントをはためかせた。シオミツ、と呼ばれる街をつらぬく一本路の片側のみ、高台を背に建つ家屋の倒壊も怖いが、それ以上に街の痕に今なお息づいているものを前にしてしまっては、気どころか腰も引けるのが人情というもの。  磨り硝子にレトロ硝子と、さまざまに貼り混ぜられている蘭燈に、いつ

          こごりふみ

          「いくつもの、息を埋めて」に、思っていた以上にたくさんのスキ、をありがとうございます! 趣味も手癖も全開で書いた物語なので、照れつつもありがたく受け止めてますす!

          「いくつもの、息を埋めて」に、思っていた以上にたくさんのスキ、をありがとうございます! 趣味も手癖も全開で書いた物語なので、照れつつもありがたく受け止めてますす!

          今年の文披31題参加作にスキ、をありがとうございます! インスピレーション一発勝負で書いておりますが、気になる作品がありましたなら嬉しいです!

          今年の文披31題参加作にスキ、をありがとうございます! インスピレーション一発勝負で書いておりますが、気になる作品がありましたなら嬉しいです!

          いくつもの、息を埋めて

          「ここが、シオミツ……」  さまざまな破片や石ころに埋められそうになっている路を前に、コウは息を飲んだ。  港の端から高台へと続く坂道の半ばで見えてきた路を左に曲がった先には、背の高い樹がずらりと並んでいる。常緑の、重たい緑の葉先がぎちぎちと触れ合うその下に、二階建ての建物が押し黙るように点在していた。重く閉ざされた雨戸やシャッターに傷をつけながら、かつては色がついていた、と分かる瓦の欠片が、いくつも路に落ちている。しかしそれは、街全体で色を揃えたような感じではなく、それぞれ

          いくつもの、息を埋めて

          今年の文披31題参加作へのスキをありがとうございます! 例年以上に筆まかせの物語たちですが、ひととき、お楽しみいただけましたなら幸いです。

          今年の文披31題参加作へのスキをありがとうございます! 例年以上に筆まかせの物語たちですが、ひととき、お楽しみいただけましたなら幸いです。

          遠いとおい、蒼ひとつ

          「まるで標本、みたいなお店だな」  西の港から南へと、河岸替えに歩き出した途上でコウが見つけた、一軒の空き家。深いオリーブ色と白の市松模様のタイルにガラスケースと出窓、その奥のショーウィンドウも、居並ぶ厚手のガラス製の壺も、すべて透明なまま残されている。それでいて、何かしらの大売り出しをやったような幟や貼り紙の跡も見られない。日々の商いを淡々と続け、すべての品々を売り切ったところで、あしたまたすべて補充しよう──と、これもまたいつものように思い立ったところで、ふわりと刻を止め

          遠いとおい、蒼ひとつ