見出し画像

『JAMJAM日記』と吉岡実

『JAMJAM日記』1977年2月、殿山泰司が金井久美子・美恵子姉妹と浅草の「かいば屋」で呑んだ際、
「オレが会ってみたいと思う人間は渋沢龍彦さんと吉岡実さんやァ」
と言ったとある。
その翌月、姉妹のマンションで吉岡夫妻に紹介され、「オレはグレタ・ガルボやクララ・ボウや昔のエクランの話題ばかり回転させ」、うれしかったなァと書いている。

殿山のエッセイにはしばしば吉岡実が出てくるが、この『僧侶』で有名な詩人の本も現在ではなかなか入手困難だ。

ほとんど古書。
今年6月、小笠原鳥類『吉岡実を読め!』が出たのがすごい収穫だと思うが、詩集自体の稀少さは相変わらず。

うちの本棚には『吉岡実散文抄』があり、この新書くらいが今でも変えるかと思ったが、メルカリで2000円以上値付けされている。
確かに池袋のジュンク堂にも「詩の森文庫」はあまりなかった。

この『吉岡実散文抄』は題名通り、詩集ではないが、詩作の背景や詩人の日常がよくわかる。
中でも「想像力は死んだ 想像せよ」の一文は、ベケットの入門書からの引用のようだが、実にグサリと来る文章だ。
作り手は想像しなければならない。

ポツポツと吉岡実の詩集を集め直すよりはネットであれこれ探すことになると思うが、殿山泰司の本棚には吉岡実が並んでいたのだ。

*かいば屋は『酒場放浪記』でも紹介された名店だが、現在は閉店。

殿山泰司の愛読書だけでなく、通った店も縁遠くなっていく。
50年前の日記やもんなあ。

いいなと思ったら応援しよう!