お父さんのタニシの味噌汁
私の父はおとなしそうなのに変わり者だった。
どれくらい変わり者かと言うと、配偶者を面白い女だからと言う理由で選び結婚した位だ。
他にも、わざわざ統合失調症の人と何時間も話をしたり、その話を私たちに聞かせたりする位だった。
そんな父の趣味が拾ってきたものを食うということだった。
普段の父と言えば、PCパーツを集めて、自作PCを作るだけのどちらかと言うと、オタクだった。
正月に同僚からときめきメモリアルの画像を送られてきて、怒っていたのが面白い。
父はどちらかと言うと小柄な方だ。そのせいか、他の男性に対して、すぐ「あいつは身長が低いからだめだ」などと言ってみたり、そうかと思えば、私がちょっと仲良い男の子の身長が伸び悩んでいるのを見て、〇〇君は可哀想だなと勝手に感情移入したりしていた。
タニシの味噌汁の話に戻る。
父はある日散歩をしていたら、タニシを見つけた。
そしてなぜかそれをバケツに入れて持ち帰ってきた。
嫌な予感はしていたが、父親は味噌汁に入れて振る舞った。
多分下処理なんかしてなかったと思う。
料理係だった父は、母親が泊まりの日を狙って、タニシ味噌汁を作った。
弟も吐き出すほどのまずさで、父親もこんなの食えたもんじゃねぇと言いながら全て食べていた。
味は覚えていないがめちゃくちゃドロみたいな匂いがしたの覚えている。
父親の意味のわからない食事はまだある。
ある時は野良のゴキブリを食べていた。
厳密に言えばゴキブリを食べるつもりはなかった。そうなのだが、気がついたら、食品の中にゴキブリが入っていたそうで、なんかめんどくさくなって食べたとこと。
味はレモングラスみたいな味だったらしい。
父は嗅覚がおかしい。
牛舎に行った時に、1人だけ匂いを感知していなかった。
私が知る中では、つくしやタニシやよもぎやそこら辺に生えてるニラ、そこら辺に生えてるたんぽぽ、そこら辺に生えてる草、そこら辺にいたゴキブリ何でも食べていたように思う。
父はほんとによくわからない人で、母より収入があるのにもかかわらず、家事育児を勝手にやっていた。休みも少ないのに、休みがあれば子供の世話をしていた特によくわからないご飯をよく作っていた。
ちょっと暇が出来れば自作PC作り、謎の歴史語りをしていた。今考えれば謎では無いのだが、かなり詳しい人でニッチな人間だったと思う。
漢文がすごく大好きだった曽祖父の、古い家に入り浸り、漢文の本や六法全書をぱくってきたりしていた。
それを随一母親に自慢するのだが、母はPCも詳しくなければ、漢文も法律も詳しくもなかった。
子供ながらにどういう設定で仲良くなったのか全くわからない夫婦だった。
高校生位の時に試しに聞いてみたことがある。
「どうして結婚したの?どこで知り合ったのと。」
そうしたら、今はもう話してもいい時期かもしれないなと話してくれた。2人が学生結婚であること、母親の前に保育士と付き合っていたが、全然面白くなくて疲れた話。そもそも日本人の容姿があんま好きじゃない話などいろいろしてくれた。極めつけは母親の自信過剰ぶりが面白すぎて離れられなくなっていたということだった。
父親曰く、ファンだった、菊池桃子に似ているそうだ。
母親は松田聖子に似てると言い張っている。
だけど、若い頃は平野ノラに似ている。
しめる言葉もないけど、そんなこんなで今日の話はおしまい。