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孤狼の血 柚月裕子


あらすじ

昭和63年6月、呉原東署捜査二課に配属された日岡秀一は上司に会うために課長の書いてくれた地図を頼りに指定された場所へ向かっていた。直属の上司で係長の大上巡査部長は県内でも有名な人物で表彰されることも多いが、問題行動も多い人物だった。日岡たちは、加古村組のフロント企業である呉原金融に勤める上早稲二郎が行方不明になっている事件を調べることになるが…。


ここからネタバレ含む感想

呉原署捜査二課の暴力団関係に配属された日岡は、型破りな上司大上に振り回される日々を送る。呉原署内では、呉原金融の従業員上早稲が行方不明になりその捜査を進めていた大上と日岡だったが、さらに加古村組と尾谷組の小競り合いから一触即発の事態へ発展していく。
日岡から見る大上は警察官とは思えないくらい羽振りがよく、尾谷組、瀧井組の組員とは懇意にしているように見える。捜査は、法律すれすれというか完全にアウトな捜査も行いそれでも、自分が持つコネクションで新しい情報を仕入れて着実に成果を上げている様子を隣で見ていく。
最初、信じられない不信感から始まった感情は徐々に、その行動の裏にある信念へと繋がり、やがて同調していく日岡のそんな心の中の変化が良く描かれている。混とんとする組同士の争いで誰が正義で誰が悪かそれすらも判断できないような(一応物語の中では正と悪は付けられているが)自体が進み自分の立ち位置も分からなくなり、出口も分からなくなるくらいそれぞれの立場での動きが複雑に絡まっているようなストーリーになっている。
任侠系の話はあまり得意ではないのでこのシリーズはなんとなく手が出なかったけれど確かに話はすごく練られていて引き込まれるお話でした。ここから続編ではどのように話が展開していくのか…。(ちょっとその後の経過はサラッと触れられていますが…)日岡がどのように変化したのか考えさせられました。

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