凍りのくじら 辻村深月
あらすじ
高校生の芦沢理帆子は、現在一人で暮らしていた。父、芦沢光はカメラマンだったが失踪して行方不明、母は病気で入院中だった。
ドラえもんを愛し、藤子・F・不二雄を尊敬している理帆子はSFという頭文字を周りの人にあてはめていた。理帆子は「少し・不在」、母は「少し・不幸」というように、そんな理帆子の前に同じ高校の3年生の別所あきらが現れ写真のモデルを頼まれるが…。
読書順3番目です。
ここからネタバレ含む感想
辻村さんのドラえもんに対する大きな愛情が感じられる作品、作中で藤子・F・不二雄さんの語った「S・F(少し・ファンタジー)」をモチーフにいろいろな人に「S・F」を付けていく。
そんな理帆子は、「少し・不在」でレベルの高い進学校に通いながら、学校の中にも遊び友達の中にも、家族の中にも自分自身が不在のように感じながら生活していた。そんな理帆子の前に現れた別所は「少し・フラット」写真のモデルを頼まれたことをきっかけに話をするようになる。
物語を読んでいて、理帆子の感じている孤独のようなものが主テーマになっているのかなと思いましたが、理帆子と同じように読者も不在の中に放り込まれてしまったようで、物語の先行きが見えず、なんだか薄暗い森の中の獣道を進んでいるような気分で読み進めました。
この話はどこへ向かっているのか…、途中で迷子になっているような不安な自分を感じながら…。最後は、理帆子の前に道を照らす光が示され、エピローグではすっかり変わった理帆子の様子が分かりますので、読了感はなかなかよいです。