アイカワマホ

かりそめに、書き始めるとしたらどんな言葉から?あのころとは様々なことが変わったけど、変わらぬ人間模様を描きたい。現実と虚構の混ざった短編コラムを掲載しています。文学修士。

アイカワマホ

かりそめに、書き始めるとしたらどんな言葉から?あのころとは様々なことが変わったけど、変わらぬ人間模様を描きたい。現実と虚構の混ざった短編コラムを掲載しています。文学修士。

最近の記事

あのころ、TOKYOで。11

11 恋愛と演技 友達の紹介でデートすることになった相手は、若いころドラマに出たことがあるという35歳の男性だった。 なんでも学園もののドラマで、主人公のクラスメイトだったそうだ。 「ま、その後はちょっと勉強とかも忙しくなって、俳優とかはやってないんだけどね」 ちょっとワイルド系の整った顔立ちの夏川君はそう言った。 「ドラマに出るなんてすごいわ!」 私がそういうと、夏川君は嬉しそうに笑った。 ドライブが好きいう夏川君のおすすめで、彼の車でお台場に行くことになった。私は車の

    • お義母さんはADHD 5

      買い物に注意 お義母さんってADHDなのでは?と気づいたのはごく最近。そう思えば、不思議なこと、理解できないことがたくさんだった。嫁の私はそんなお義母さんの言動に一人悩み、苦しんでいる。 お義母さんは通信販売が好きだ。カタログショッピング、テレビショッピング、チラシ通販、新聞広告、とにかく通信販売は何でも大好き。 つい先日も、掃除機のヘッド(細い部分を掃除するほうではなくメインの方)をどこにおいたかわからなくなり、不便なので掃除機を買うと言い出した。 「あの、テレビでやっ

      • お義母さんはADHD 4

        4.想定するということ 廊下にぼたぼたと水が落ちている。 よく我が家で起こる現象だ。といっても怪談ではない。 それは、洗面台のところから、タオルの置いてある場所まで続いている・・・ 犯人はお義母さんだ。 お義母さんは、顔を洗うときにタオルを用意するということができない。顔を洗うとタオルが必要になるということが想定できいないようである。 なので、顔を洗った後、ぼたぼたと大量の水をこぼしながら、タオルのある場所まで行く。顔を拭くとそのことは忘れるようで、水はそのまま。だから我

        • お義母さんはADHD 3

          3.他人を思いやる発言はできない 気が付けば結婚当初からおかしなところはたくさんあったが、私以外の家族(義父、夫)にとってはいつものことで、お義母さんの行動や言動に一人悩み傷ついてきた嫁の私。今回は、思いやる心を持たない人の発言について。 私はあまり体が丈夫なほうではない。といっても、一か月に仕事を何度も休むとかいうことではない。季節に一度くらい、原因不明で体調不良になったり、低血圧低体温が原因でしばらく横になったりという程度である。 しかし、それすら我が家では許されなか

          お義母さんはADHD 2

          2.料理は苦手 考えてみれば初めからおかしなところはあった。でも私以外の家族(義父、夫)は、「忘れっぽいだけ」だとか「いつものこと」と言っていたので、そんなものかと思っていた。 例えば、脱いだものが廊下に点々と落ちている。 ジャケット、靴下片方、シャツ、というように。子どもの友達が来るときは片付けさせてもらわなくちゃ、と思っていた。 洗濯物も、洗うと忘れてしまうようで、私が朝洗濯しようとすると、おそらく前日お義母さんが洗濯したものがそのまま入っている。 「出させていただいて

          お義母さんはADHD 2

          あのころ、TOKYOで。10

          10.心の配達 「ねえねえ、3対3の合コン行かない?私の友達が男の子連れてくるって言ってるから。でね、あと女の子二人だから、マホ誰か誘ってきて」 サッキーに誘われた合コンは、結構素敵な男の子がやってくる。というのもサッキーは切れ長のうるんだ美しい瞳、厚ぼったいセクシーな唇、そしてうらやましいほどの巨乳を持つ美人さんだからだ。 「いいよ!行くわ。友達連れて行く!」 私は友達のミキを誘って行くことにした。 待ち合わせは銀座。サッキーが連れてきた男の人達は、きちんとした社会人の

          あのころ、TOKYOで。10

          あのころ、TOKYOで。9

          9.クラブ 「ねえねえ、今度の土曜日さ、クラブでオールしようよ」 友達のカナコに誘われ、私はちょっとためらった。 興味はあったが、私はどちらかというとおとなしい方で、朝まで踊って、というのはちょっと苦手な部類だ。しかもなんだか怖そうだし。 「大丈夫だよ。私一緒だし。あのね、友達の友達がDJするから人呼んでって言われてるみたいで。来てくれないかな。招待で入れるからお金もいらないよ」 入口で名前言えばOK、というやつだそうだ。 とっても迷ったが、これを逃すとクラブに行く機会はな

          あのころ、TOKYOで。9

          あのころ、TOKYOで。8

          8.四街道の占い師 「四街道にめっちゃ当たる占い師がいるのよ」 仕事仲間のエレナがそう言った。エレナは千葉県出身。なんでもその占い師に見てもらったところ、予言通りになり、それから運も開けてきた友達がいるという。エレナも見てもらったら、本当によくエレナのことを言い当てたのだそうだ。その頃の私は彼氏もおらず、なんとなく日々を暮らしていたので、ちょっと占い師に見てもらうのもいいかもしれないと思った。 しかし、四街道である。東京からはちょっと遠い。友人にその話をすると、ぜひとも行

          あのころ、TOKYOで。8

          お義母さんはADHD 1

          1.お義母さん もしかしてADHDなのでは?と思い始めたのは最近。 結婚当初からおかしな行動ばかりのお義母さんだったが、私以外の家族は慣れているのかそれは普通のこととして接していた。家族の中でただ一人お義母さんの不可解な行動に困惑し、時には深く傷ついている私。どうにかできるかわからないけれどどうにかできたらいいな。実践している対処方法などを掲載していきたいと思う。 お義母さんは家付きさんの婿取りさんで、お嫁さんの経験がない。また、家業を手伝っていたので、就職の経験もない。

          お義母さんはADHD 1

          あのころ、TOKYOで。7

          7.元ギャルのさとちゃん さとちゃんは私が最初に東京で働き始めた会社にいた女の子だ。アルバイトで入ってきていたが、与えられた仕事をテキパキとしっかりやるし、とても気が利く。そんなさとちゃんは私と同い年で、社員とアルバイトの垣根を越えて仲良くなった。 見たところからそうだろうとは思っていたが、さとちゃんは元ギャルだった。だから社会人になってからも、つりあがった細い眉や、真っ黒なひじきまつ毛など、メイクがどうしてもギャル寄りになってしまうと嘆いていた。しかしそんなメイクもはき

          あのころ、TOKYOで。7

          あのころ、TOKYOで。6

          6.エリちゃんがチャンエリになるまで。 出逢った頃、エリちゃんはまだ高校生だった。だから彼女は「エリちゃん」と「ちゃん」をつけて呼びたい感じだ。 あどけなさの残る彼女とは、東京で、同じバンドが好きな人が集まる場で出会った。その場に来ていた人たちはちょっと変わった人が多かったのだが、エリちゃんは高校生だったし若くておとなしく、その場にちょっと合わない感じだった。かく言う私もその場にいる人たちとは相いれず、結局その会には一度しか出ていないのだが、その一回で仲良くなった数人とはた

          あのころ、TOKYOで。6

          あのころ、TOKYOで。5

          5.観覧車がめぐるまで おそらく私は車を運転する男に弱い。 その真剣な横顔が素敵なのか、ハンドルを握る手が素敵なのか、ときどきこちらをちらりと見る眼差しが素敵なのか。 とにかく、車の助手席に乗ると、運転手の男が素敵に見えてしまう。 ケイゴは大学の友達だった。大学時代から彼女がいたが、ケイゴはいろいろな女の子と仲が良く、女友達も多かった。 ケイゴは私にも親切で、私もケイゴのことはいい友達だと思っていた。 そう、彼の車に乗るまでは。 「図書館行くなら、乗せてってあげるよ」

          あのころ、TOKYOで。5

          あのころ、TOKYOで。4

          4.お隣は一妻多夫? 都会では隣に誰が住んでいるかわからないというが、私は知っていた。不思議な隣人が住んでいることを。 私が住んでいたアパートはボロボロの築20年の木造2階建てで、一階に二部屋、二階にも二部屋あった。 中は比較的広くダイニングキッチン(というか、台所にテーブルが置ける、くらいな意味なのだが)が8畳ほど、そしてその他にドア付きで6畳の部屋が二つあり、なかなかの良い間取りだった。そのため私は友達とルームシェアしており、それぞれ6畳の部屋を自分の部屋にし、台所

          あのころ、TOKYOで。4

          あのころ、TOKYOで。 3

          3.巨乳ちゃんのサッキー 大手広告代理店で派遣社員として働いていた。派遣社員は派遣社員で仲間ができる。そんな中に、とんでもなく綺麗で女優さんみたいな派遣社員の女の子がいた。私よりちょっと年上。切れ長の美しい目は少しうるみ、厚ぼったい唇がとてもセクシー。そして、うらやましいほどの巨乳。彼女の名前は崎山ユキ。サッキーと呼ばれていた。 当然のごとく男性社員からはものすごい人気で、「巨乳ちゃん」と呼ばれていた。普段は別のビルに勤務している彼女がこちらのビルに来るとなると、見に来る

          あのころ、TOKYOで。 3

          あのころ、TOKYOで。 2

          2.バンドマンの「恋はマラカス」 東京という街は人があふれている。東京=人。言い換えもできるんじゃないかと思うほどに。 働き出してからしばらく。友達もたくさんでき、友達と出かけることも多くなった。そうすると友達の友達に出会ったり、とにかく人とのつながりが増える。そこであらわれたのが「S君」だ。 「ねえ、この前会ったS君のこと覚えてる?」と唐突にカナコに言われ驚く。 「覚えてるけど、なんで?」 聞き返した私にカナコがほほ笑んだ。 「あのね、連絡取りたいって。マホのこ

          あのころ、TOKYOで。 2

          あのころ、TOKYOで。 1

          1.あのころ、TOKYOで。 「あのころ」はどんどん遠くなっていき、気が付くと20年たっていた。 あのころ、今とは違って東京は若者のあこがれの街だった。 今みたいに、どこにいても何でも買える時代じゃなかった。雑誌に載ってるあの服は、ドラマに出てきたあのスイーツは、東京じゃなきゃ手に入らなかった。 東京にいけば何か面白いことがある。東京にいけば素敵なことがある。私たちの中で東京は「東京」でもなく「トーキョー」でもなく「TOKYO」だった。 そう、「TOKYO」は、憧れ

          あのころ、TOKYOで。 1