究極クッキング⑤『チーズininハンバーグ』

ハンバーグの中から、チーズがとろり。
人類が発明したものの中でも至高の一品ではなかろうか。
わたしは、びっくりドンキーの外に置いてあるメニュー看板でチーズハンバーグを見るのが好きである。
本当は本物のチーズハンバーグを見ていたいのだが、お店に入って知らない人が食べているのを間近で見ていたら、お店の人がパトカーを呼んだので、それ以来、外にあるメニュー看板を見るようにしている。
たまに、店員が「〇〇番の方～｣と呼ぶ時に、「ハイ！｣と元気よく返事するのだが、いつも食べられない。なんと、席に着くと、よその一家プラスワンになるのだ。

中でハンバーグを見ていた時に、店員が警察を呼んだのは、おそらく、わたしが刑事だと思っているのだろう。単純な間違いである。たとえだったとしても、今、現場検証をするはずがないのだ。

だって、
牛はもう、とっくの昔に死んでいるのだから。

［チーズininハンバーグ］
用意するもの：
①ひき肉（牛6：豚6）12進法。
②チーズ
③チーズ（お菓子）

作り方：
ひき肉にチーズを入れて焼く。
しかし、おうちでやるとチーズがトロリとならないので、チーズの上にうまい棒のチーズ味を刺さなければならない。
その穴から、チーズを吸うのだ。

実食：
台所でなかなか吸えないチーズをうんうん唸りながら吸っていると、お母さんが来た。

一大事である。
前に、お米の炊き方がわからず、炊飯器の中のお米に直接火を着けた時ぐらい、一大事である。
なぜならば、台所は油とかひき肉の残りとか、ミニカーとかおじいちゃんから盗んだ仁丹とかが散らばっているからだ。
また、ハローワークかよくわからないセミナーに連れて行かれる。

これはまずい、と思い、わたしはお皿を背中に隠し持って母をリビングに誘導した。
「今日、スシローの前で、吸四郎を見たよ｣
わたしは、とりとめのない話をした。
吸四郎とは、わたしが兼ねてからスシローにいるのではないかと睨んでいる人の事で、たぶん青ヒゲがある人だ。
見た、というのは嘘ではなく、希望的観測も含めて青ヒゲの人を見たという事だから正確には嘘ではない。
「うんうんうん｣
母は早頷づきを三回頷した。
これはいつもより三倍納得している証拠だ。


しかしながら、後ろに持っているハンバーグを見られたら台所を使ったのがバレてしまう。
そうだ、そのまま、お皿に座って隠せばいいのではないか。
しかし、うまい棒を立ててあるので、ズボンに刺さる。
そうだ！
ズボンとパンツを脱げば立ててある長い棒のうまい棒もお尻の穴に入って、無事隠せる。
わたしは、母がテレビに目をやった隙に、ズボンとパンツを脱いで、チーズininハンバーグのお皿に座った。

サクッファッサ。

サクッとファッサっという音が合わさりあたりに響いたが、母は気づいていない。
粉々になって思惑通りには如何なかったが、うまく隠せた。
そうだ、このままパンツ・ズボンを履けば、その中に隠して移動もできる。
まずはパンツから履いたが、お皿がひっかかりズボンが履けない。
うんうん唸る。
うんうん唸る。
しばらくうんうん唸りながらやるが、だめだ、履けない。
ああ、もうだめだ。
わたしは、観念して、パンツの中にハンバーグを残したまま、お皿とズボンを手に持ち、白いブリーフ姿のまま立ち上がり、母に謝った。

理由は言わない。
いづれ、台所を見てわかるだろうから。
わたしは、くるりと振り返りリビングを立ち去った。

「ギャー！！｣

後ろからは母の叫び声がする。

ちゃんと、素直に謝れる子になった。
立派な大人になった。
喜びの叫び。
そういう事だろう。

わたしは、誇り高くなり、
そのまま家を出て公園に遊びに向かった。