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ささづかまとめ、液晶画面を割る(5年ぶり、2度目)
土地勘のある人は逆に驚くかもしれないが、わたしの住む笹塚という街には、マクドナルドがない。モスバーガーもロッテリアもケンタッキーもある。ウェンディーズ・ファーストキッチンすらあるのに、マクドナルドはない。
それだけファストフードがあるなら別にいいじゃん、と大多数の人は言うと思う。わたしもわりとそう思う。でも、ほかのチェーンでは代えが利かないものがあって、それは朝マックである。朝マックが食べたい、というときは年に何度かあって、そうなると笹塚にないマクドナルドを求めてさまようことになる。
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家から最寄りのマクドナルドを検索してみれば、幡ヶ谷、下北沢、明大前、方南町……。まるで魔法陣でも描こうとしているかのようにきれいに笹塚を避けている。笹塚とマクドナルドの間になにがあったというのか。
この4店舗の中で一番気軽に歩いて行けるのは幡ヶ谷のマクドナルドだが、この店舗はわたしたちが地下牢と呼んでいるかなり陰気なマクドナルドである。おもしろい店舗ではあるが、朝から行きたくはない。
というわけで、朝マックは郊外の店舗で食べるにかぎる。「明日の朝、我々は朝マックが食べたくなるのではないか」と予感した夜は、たかやまさんとふたりで地図アプリをにらみ、まったく行ったことのない未知なるマクドナルドを調べ、翌早朝にいそいそと出かけるのである。
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ここで、朝マックを食べるための理想のマクドナルドの条件を3つ紹介したい。
1.1階に客席がたくさんある
かっぱらうように商品を受け取っていくUberの配達員や、店員さんに小銭を投げつけてコーヒーを買う老人など、世の中にのさばる人の形をしたなにかの所業を眺めるのが、単調な朝マックのスパイスとなる。レジから伝わってくる情報量の多さに、作業なんか全然捗らないような席に座りたい。
2.幹線道路沿いに立地し、大きな窓がある
絶対こんなところ住みたくないなと思いながらレジに背を向け外の景色を眺めれば、エコな乗りものなのに不必要にスピードを出してアイデンティティクライシスに陥っているプリウス、腹筋ローラーみたいな姿勢でプライドを保とうとする大きなバイク、ナンバープレートがなにかを暗示するかのようにぐちゃぐちゃになっている電動キックボードなど、蠱惑的な乗りものたちが闊歩している。天界から下界を見下ろす気持ちはこういうものなのだろうかと思いを馳せれば、塩辛いハッシュポテトも神饌の趣き。
3.適度にうるさい
店内はある程度騒がしいほうが望ましい。なぜなら食べているものがパンと肉とイモだからだ。どうしてこんな頭の悪そうなものを食べているのに静かにしていられるだろうか、いや、できない(反語たのしい)。
パンと肉とイモをコーヒーで流しこみながら、パソコンでよくわからない文章を書いて、かっこつけてるけれど要するにただのブログサイトであるnoteに投稿しているそこのわたし、猛省しなさい。客観的に見たら滑稽極まりない。それより目の前でぼーっとしている美人とおしゃべりしなさい。どうして2人で朝マックに来て片方だけパソコンを触っているのか。あーあ、たかやまさんが飽きてマックグリドルのおかわりモバイルオーダーしちゃったよ。
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そんな感じで、その日も郊外の街で朝マックを堪能したわたしたちは、朝マックの時間が終わると同時に店を出た。そしてわたしはスマホを駐車場のアスファルトにうつ伏せで落としたのだった(前置き長っ)。
がきゃ、といい音がした。わたしはすぐに拾わず、後ろをついてきていたたかやまさんを振り返って尋ねた。
ささづかまとめ
「これ、割れたと思いますか?」
たかやまさん
「うん」
ささづかまとめ
「わたし、どうしたらいいんでしょう?」
たかやまさん
「普段の行いを少し改める」
ささづかまとめ
「例えば、あらゆる物事にいちいち心の中で毒づくのをやめるとか?」
たかやまさん
「うん。それかハンドグリップにぎにぎして握力を鍛えるか」
ささづかまとめ
「どっちのほうが簡単だと思いますか?」
たかやまさん
「にぎにぎ」
この記事で言いたかったことまとめ
幡ヶ谷のマクドナルドは一回見ておこうね
マクドナルド幡ヶ谷ゴールデンセンター店。いつの時代の地下街なんだ? みたいなところにある。なにかの用事で幡ヶ谷に来たら見るだけでいいので行ってみてほしい。ビルの1階にあるダイエーはいつまで経ってもダイエーのまま。10年後には建物ごとなくなっているかも。その暁にはぜひ笹塚に移転してきていただけないでしょうか。
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夜ごはんが魚だと朝マックに行きたくなる傾向かも
たかやまさん
「お肉を食べないと、お肉が食べたくなって、お肉を食べに行くってことだよね…」
マクドナルドに行く電車の中で、揚げたてのポテトみたいな色をした頭をわたしの肩に擦りつけながらそうつぶやいていた。だれかの構文みたいな発言だが、眠そうなのでしかたない。
窓の向きを考えてお店を探そう
窓が東側とか南側にあると、ロールカーテンや木目調のブラインドカーテンが下ろされていて外の景色が見られない場合がある。事前にストリートビューで確認し、そういうお店は避けるようにしている。朝マック遠征界隈(いるのか?)では常識かもしれない。わたしは特急や新幹線の座席を予約するときも窓のことを考えているので慣れている。
素敵な人も、いますよね
素敵な配達員さんや素敵なおじいさんももちろんいる。いることにはいるのだが……って感じ。
電動キックボードはたまに乗る
賛否両論というより否しか目につかない世間の電動キックボード評。杉並・世田谷・渋谷周辺のような、区画整理されていない街をうにょうにょ縫いながら移動するにはちょうどいい乗りものだと思う。でもずっと乗ってると風を全身に受けて冬は寒い。舗装状況によっては手袋しないと手が痺れる。荷物は必ず背負わなくてはいけない。
あまり快適な乗りものではないと思う。2〜3kmくらいまでの移動で、ちょっと急いでいるとき、暑くて早く屋内に入りたいときに使うのがちょうどいいのか?
たかやまさんはすごくやさしい女の子
目の前でわたしがパソコンを触っていてもまったくなにも思わない(わけじゃないか…)、ただぼーっとしていてくれるのがたかやまさん。
わたしとしてはパソコン中に目の前で美人がぼーっとしているのはすごく癒されるのだが、あまりにも暇だと追加注文して、気がつくとホットアップルパイをQooで流しこむような惨劇が起こっていたりするので、普通におしゃべりしたほうがいい。
5年ぶり2度目とは?
2020年にコンデジを落として液晶モニターをばきばきにした。1年半くらいばきばきのまま使っていたけれど、カメラを見るたび悲しくなるので買い替えた。その買い替えたコンデジも去年、盛岡駅前で落としたが、今度はさすがに保護フィルムを貼ってあったので無事だった。
幼い頃から「ちゃんと持ちなさい」と言われ続けて、しかし大人になってもどこか注意が散漫になるのは変わらない。カップやグラスはこれまでいくつも粉砕し、最近ではIH対応のフライパンを床に落として変形させて使えなくしたり、ラーメンの入ったどんぶりをひっくり返してやけどしそうになったりしている。
たかやまさんから「メラミンのカップを使えばいい」とキャラもののカップをプレゼントされたこともある。マクドナルドはだいたい全部紙なので、助かる。
あれ? もしかしてこれって、笹塚にマクドナルドがないせいでわたしのスマホの画面が割れたってことじゃないですか?
そういうとこだぞ。