見出し画像

健康診断が終わったので、ラビューに乗って曼珠沙華を見に行った。

登場人物紹介

たかやまさん

金髪の自称ギャル。ギャルではない。いつも眠そうにしているが、ごはんのときとニチアサだけは元気。美人だがときどき下ネタを口走ってしまうのが玉にキズ。理想とする女の子は『響け!ユーフォニアム』の久石奏。

いちがやさん

おしゃれ番長。たばことお酒をこよなく愛する常識人。たかやまさんとは学生時代からの友だち。病みかけたときは、すかさずシチューかカレーを作ると精神が安定するらしい。涙が出るのはたまねぎを切っているから。

ささづかまとめ

高身長だが小心者の書き手。たかやまさんとは幼なじみ。あまーいコーヒーかミルクティーを飲みながらじゃないとブログが書けないという病にかかっている。ごくごく、ぷはぁ。カラオケに行くと南波志帆ばっかり歌う。


本文です

渋谷の雑居ビルの中のクリニックで健康診断を終えて、ヒカリエのテラスでいちがやさんとたかやまさんと合流したのはお昼の12時すぎだった。今日は埼玉にある巾着田(きんちゃくだ)という曼珠沙華の群生地、要するにヒガンバナがいっぱい咲いているスポットに遊びに行く。

きっかけはたかやまさんが読んだ漫画で巾着田が取り上げられていたから。偶然にもたかやまさんがそれを読んだのは巾着田で実際に曼珠沙華まつりが始まる数日前のことだったので、いちがやさんも誘って見に行こうということになった。


宮益坂からヒカリエに入る。まずはカーディガンとワイドパンツという出で立ちのいちがやさんが目に入り、そのとなりにTシャツと丈の短いサロペットという時期的にはだいぶ涼しそうな見た目のたかやまさんが、考えごとをしているのかぼーっと立っている。

ふたりが並んでいてもいまいち友だち同士に見えないし、同い年にも見えない。はっきり言えばたかやまさんの見た目が子どもっぽいのである。幼めの服装が痛々しくない。

ふたりと合流して渋谷駅まで歩き、12時29分発の埼京線・快速川越行きに乗り、池袋で下車する。たかやまさんによると、渋谷から池袋に行くとき山手線ではなく埼京線や湘南新宿ラインに乗ろうとするあたりが、わたしのいかにも鉄道ファンっぽいところだという。言いたいことはなんとなくわかる。

池袋の駅のプラットホームは乾いた風が吹いていて涼しかった。もう秋である。人混みを避けてメトロポリタン口のベックスコーヒーで昼食兼時間調整をする。たかやまさんとわたしはパニーニを食べた。健康診断の後の空腹に小麦と脂っこいチーズがしみる。いちがやさんはコーヒーを半分飲んだら喫煙ルームに向かい、加熱式タバコを吸いたいだけ吸って戻ってきて、冷めたコーヒーを飲み干した。わたしたちは3人で行動しているが、各々わりと自由である。

西武線のホームに移動して13時30分発の特急ちちぶ17号に乗る。車両は何度見ても慣れないラビュー。これに飯能まで乗る。

西武池袋駅に停車中の西武001系(Laview)。慣れない。

たかやまさん
「Among Us(アモングアス)のクルーみたい」

ささづかまとめ
「おお、言われてみればたしかに似てますね」

いちがやさん
「動画観てたなあ」

たかやまさん
「クルーかわいい。あんな見た目なのに酸素が要るところ」

いちがやさん
「それはよくわからないけど」

車内は空いている。やがて列車は発車すると右に大きくカーブし、住宅街に入っていく。さっき改札内で買った焼きたてのベルギーワッフルを3人で分ける。紙袋の中にはワッフルが6つあるが、たかやまさんが3つ食べる。チョコレート、アーモンド、栗のワッフルをいちがやさんと半分こしながら食べていると、空腹がいよいよ解消された。

ラビューの車内。シートはこれでもかというくらいレモン色で、西武ッ!という感じ

最初の停車駅の所沢で早くも数人の乗客が下りていく。池袋から所沢まではわずか20分、特急料金は500円だ。急行に乗ればそれほど所要時間も変わらないし、平日のお昼なので着席もできると思うが、優雅に、とにかく楽に移動したいという需要は一定数あるのだろう。

車両基地のある小手指(こてさし)を通過すると、ようやく街並みが途切れてのどかな景色になった。それもつかの間で、列車は航空自衛隊の基地の中に突っこむ。パラボラアンテナや無機質な住宅群を眺めていると基地を抜けて2連続で左にカーブする。

入間市の手前は眺望がよく、秩父の山々が霞んで見えた。入間市を出ると線路は右に急カーブしてすぐまた左にカーブする。この不可解な線形は、入間川の河岸段丘や台地の縁をなぞり、高低差をできるだけ無くすため努力した結果なのだろう。

すっかり地方都市という雰囲気の飯能には14時8分に着いた。トイレに行って、14時17分発の高麗(こま)行きの臨時列車に乗る。たった2駅区間しか走らない曼珠沙華まつりへのシャトル列車だ。土日祝はこれに加えてラビューも高麗に臨時停車する。田舎育ちのせいか、ヒガンバナにそこまでの集客力があるというのがいまいち信じられない。

飯能駅に停車中の西武4000系。近い将来に東急9000系に置き換えられる計画が発表されている

4両編成の車内はセミクロスシート。空いているボックス席を探して座る。特急列車が入ってきた方向と逆向きに列車は発車した。飯能はスイッチバック構造の駅である。

JR八高線との乗換駅である東飯能でさらに乗客を増やして山の中に入っていくと、左右に線路が分かれていく。武蔵丘車両基地への線路だ。車両基地を過ぎて左にカーブし始めると、列車は速度を落として築堤上の高麗の駅に着く。わずか6分間のローカル線の旅だった。

短い乗車時間であってもうつらうつらして睡眠時間を稼ぐたかやまさんをふたりで起こして、プラットホームに降り立つ。50人前後のお客さんが下りて、折り返しとなる列車に倍以上のお客さんが乗りこんでいく。ホームの天井には「巾着田曼珠沙華公園」と書かれた横断幕が掲げられている。この様子だとかなり人気があるようだ。個人的にはマイナー観光地で人も少ないだろうと思って来たのだが(失礼)、そんなことはなかったらしい。

高麗駅のホーム。折り返しの列車内はなかなかの混雑だ

駅前に出ると赤いトーテムポールのようなものが立っている。正面にまわりこんで見るが、表と裏はまったく同じデザインである。

いちがやさん
「これ、なに?」


続きはこちら↓


この記事が参加している募集