市ヶ谷法務店をはじめました
夏が近づいて来たので「市ヶ谷法務店」というプロジェクトをはじめました。今日はその説明をします。
「市ヶ谷法務店」とは?
市ヶ谷法務店は、弁護士とデザイナーとで組織される半恒久的なプロジェクトです。市ヶ谷法務店が掲げる目的は「法律を身近な存在にすること」、ただそれだけです。そのために、弁護士とデザイナーが組んで、大学や行政等の様々な機関との連携も視野に入れつつ、様々なプロジェクトを実施していきます。
「二割司法」という言葉を聞いたことはありますか?
これは国民の2割しか司法の恩恵を受けておらず、残りの8割は法的な支援を受けられないままの状態を表している言葉です。実際はどうなのかは置いておいて、この「二割司法」がひとつのスローガンになり、裁判員裁判制度の創設など、利用者の目線から司法制度全体を改革しようとする動きがありました。
しかし、その結果、私たちにとって司法が身近になり、簡単に恩恵を受けられるようになっているのかと言われると、正直、実感がわかないのではないでしょうか。国民にとって司法をより身近で利用しやすいものとすることが極めて重要であるとしながらも(平成11年12月8日開催司法制度改革審議会第8回議事概要配付資料別添1「司法制度の現状と改革の課題」参照)、その実現がまだまだできていないように見えます。一般の方々の感覚としては、弁護士なんてドラマの中の存在だし、法律とかよくわらないし、関係ない。このように感じている方が大半ではないでしょうか。突き詰めると、司法制度の問題以前に、法律自体について馴染みがないのではないでしょうか。
そこで、市ヶ谷法務店は、そのような状況を変え、「法律を身近な存在にする」ことを考えます。
今の法律は身近なの? 信頼できるの?
まずは次の2つの資料をご覧ください。それぞれ NHK 世論調査「第10回「日本人の意識」調査(2018) 結果の概要」と総務省「参議院議員通常選挙における年代別投票率の推移」から引用したものです〔※赤字の注記は引用者による。〕。
この表は、
・国会議員選挙のときの投票は、国の政治にどの程度の影響を及ぼしていると思うか
・一般国民のデモや陳情、請願は、国の政治にどの程度の影響を及ぼしていると思うか
・一般国民の意見や希望は、国の政治にどの程度反映していると思うか
の各数値が、計測を開始した1973年から低下していることを示しています。
また、年代別投票率は全体として減少傾向にあることがわかります。
つまり、国民の行動が国の政治に影響を及ぼしていると感じている人が減少しており、そのような減少傾向に比例するように国政選挙の年代別投票率についても年々減少しているということです。
さらに、認定 NPO 法人言論 NPO「日本の政治・民主主義に関する世論調査」では、国会や政党を信頼していないが司法は信頼しているという調査結果があります。
これはとても興味深いことです。どういうことでしょうか?
現在、日本で立法機能を担うことができるのは国会のみですが、法案としては、提出方法に応じて、以下の2つの種類にわけられます。
・内閣が法案を作る内閣提出法案
・議員が法案を作る議員立法
これらはいずれも国民が選挙で選んだ議員によって構成される会議体が法案を審議して可決するものであるため、国民は間接的に立法に関わっていることになります。しかし、そうであるにもかかわらず、私たちは私たちの行動が政治に影響を及ぼしているとは感じていないし、政治家を信頼していないけれども、信頼していない人たちがつくったものを信頼している、という状況が成立していることになります。
そもそも行政は信頼できるの?
以上は立法面での話でした。
次に行政はどうなのか見ていきましょう。まずはこちらの資料をご覧ください。総務省大臣官房企画課「行政の信頼性確保、向上方策に関する調査研究報告書(平成 21年度)」から引用したものです。
フランス、イギリス、アメリカ、ドイツ、日本では政治への信頼が低下しており、行政についても「信頼しない」が「信頼する」を上回っていると記載してあります。
また、2020年3月に電通総研と同志社大学が発表した「世界価値観調査2019」日本結果を見てみると、行政に対して「非常に信頼する」+「やや信頼する」が半数以下ということ結果が出ています。
つまりどういうことかといえば、今の社会は、「法律は信頼できるが、信頼していない議員達により作られ、自分達は関わっていないと認識している」ということになります。
まとめるとこんなかんじです。
自分たちが法律を作っているという意識はなく、知らない間に決まり他人事になっています。しかし、私たちは生まれた瞬間から、法に縛られ、守られ生きています。それなのにほとんど何も知らない状態にあります。
市ヶ谷法務店は「法律を身近な存在にする」をテーマに、こうした問題の解決に取り組んで参ります。
どうやって「法律を身近な存在にする」のか?
正直それを模索しているのが今の段階です。もっとも、色々事例を調べていくうちに、鍵となるのは「共創」と「オープンデータ」にあるのではないか思うに至りました。
たとえば、デザインと法を掛け合わせた活動で Stanford University の The Legal Design Lab があります。ここは d.school が立ち上げに関わっており、法学だけでなくデザイン、テクノロジーなど複数の分野を横断したチームで活動しています。
出典:The Legal Design Lab ; http://www.legaltechdesign.com/
ほかにも、New York University の Governance Lab では CrowdLaw という市民参加の立法プロセスの研究をしていたり、日本では慶應義塾大学 SFC 研究所リーガルデザイン・ラボが法学、エンジニアリング、デザインなどの領域横断の研究をしています。
このように、法という分野にも、デザインの考えや、市民参加という流れが到来しつつあります。
note では何をするのか?
この note では、私たちの活動報告のほか、私たちが調べていることのメモや、法とデザインの面白そうなニュースの共有、CivicTech / LegalTech / GovTech / Society5.0 / オープンガバメント / スマートシティ関連の情報などを共有していければと思います。2021年4月以降は、特に弁護士の平塚が投稿する記事については、武蔵野美術大学大学院での活動について投稿する予定です。
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