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林業における「新しい価値」とは?

この記事について

この記事は、令和3年4月12日(月)に開催された、武蔵野美術大学大学院造形構想研究科修士課程造形構想専攻クリエイティブリーダシップコース(以下「本研究科」といいます。)の科目である「クリエイティブリーダーシップ特論」(以下「CL特論」といいます。)の第1回のエッセイです。本研究科のCL特論は、シラバスの表現を借用すると「クリエイティブとビジネスを活用して実際に活躍されているゲスト講師を囲んで、参加者全員で議論を行う」科目であり、要するに、最前線でご活躍されている方に登壇いただく連続イベントです。

第1回のスピーカーは、林業アーティストの足立成亮様、建築家の陣内雄様です。お二人は北海道札幌・旭川を拠点に道内各地で活動する "outwoods" という屋号により、類型としては環境保全型の林業、より物象化した形で実質的にいえば、林業を通じて森を中核にした人々の間の関係性づくりを行っています。「キコリ」の仕事は繊細で複雑な仕事であり、それぞれ個人事業主としてやっているところを "outwoods" の名下で集まるというかんじのようです。

書き手である私は林業に関してまったく知見がなく、諸々ググりながらこの記事を書いていることをご容赦ください。以下に述べることは、私の勝手な解釈であり、講演に対する印象論に過ぎません。この記事に含まれる誤りのすべては執筆者である私の責任に帰しますので、読者の皆様におかれましては、あらかじめご了承ください。

講演内容について

アウトウッズ

林業アーティストの足立様からは、林業に関する大量の「写真」をご紹介いただきました。普段から、リアルでも LINE でも、とにかく大量の写真を見せながら自身の活動を紹介するスタイルとのことでした。最近は少し「言葉」を組み合わせることもあるとのことで、発表スライド中でも比較的抽象度の高い詩的な表現を用いてお話をされることもありました。お話では、特に、景色に溶け込むような道づくりなどに注力しているとのことでした。「必要というものが長い年月をかけて時間とともに機能を高める」ということで「道」の「効率化」についても解説されました。

建築家の陣内様からは、主として森に関する「持続可能性/『ずーーっと、やっていける林業』」について、木材、土壁、薪ストーブなど、多くの写真をご紹介いただきました。そもそもどうして林業をやっているのかという点について、約40年前に新聞で地球温暖化の話が小さいコラムで出て、それが高校生の陣内様にとって本当に衝撃であったそうです。「これは絶対やばいなのでなんとかしなきゃな」というところがあったそうなのですが、世の中は当時バブルだったので全然違う方向に進んでたというところに違和感がとても大きかったとのことでした。そして、林業の現場に入ろうと思った時に「なんかそういう街作れたらいいんじゃないかなー」と思ってご自身のビジョンとしての絵を最初に書いて、それを持ちながら色々な人のところを回ったそうです。

林業から生み出される「新しい価値」とは?

率直に言えば、お二人のスピーカーのお話をどのような切り口から受け取るべきなのかというところから相当悩んでこの記事を書いています。あるいは、私自身との距離のようなものを測りかねているというべきかもしれません。私から各作品(というべきなのでしょうか?)について外から批評をするというのも何か違う気がしますし、かといって埼玉県所沢市(映画「となりのトトロ」の舞台です。東京にとってのベッドタウンであり、現在は駅前の開発が急速に進んでいます。)という里山と雑木林の出身者である私にとって身近な話かというと近いようでいてそうでもないような気もしており、捉え方が難しいなと感じています。

本来、森林は、都市の存在にかかわらず、私たちの生活と一体であるのだと思いますが、従来の私の捉え方としては「木材の供給源」や「登山やキャンプに行くところ」、「自然の堤防」くらいの認識であったことはやはり否めません。特に東京都内で生活している近年ではその認識が強くなりつつあるとの自覚があります。過去に山の中でサバイバルもやったことがありますが、「森」や「木」というものを深く認識していたかというと、そうでもありませんでした。一方で、私が育った里山や雑木林との違いは、自然としてのスケールの大きさや眺望の美しさ、都市との距離感のほかは、そこまで違いはないとも思っております。私には森林(あるいは都会から離れた田舎)への憧憬や幻想もありません。アオダイショウも、タヌキも、カエルも、色々な虫も、ともに生活してきたので、辺境の地の人間としては「新しさ」というよりも「懐かしさ」に近いものがありました。そんな20代の年老いた感想を持ちました。

おそらく、急速に都市化が進んだ地点からは林業自体が新しい価値に見えることもあるのかもしれませんが、私にとっては日常風景の一部の再認というかんじで拝聴させていただいたところが大きかったかもしれません。林業が都市化に対する逆行とも思いません。もともと都市化において汲みきれない残余があり、スピーカーのお二人はそこに着目したということだろうと理解しています。それに対する私自身の温度感としては次のようなかんじです。

「私もちょっと森に遊びに行くよ。」

(執筆者:平塚翔太/本研究科 M1)


※冒頭の写真画像は "outwoods" 様より許諾を得て掲載させていただいております。

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