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「ビジネスデザイナー」ってなんだ?

この記事について

やっほー、平塚です! この記事は、武蔵野美術大学大学院造形構想研究科修士課程造形構想専攻クリエイティブリーダーシップコース(以下「本研究科」といいます。)の科目である「クリエイティブリーダーシップ特論」(以下「CL特論」といいます。)における令和3年10月11日(月)に開催された第14回最終回のエッセイです! ついに最終回です!! 最前線でご活躍される方の連続講演イベント最終回のスピーカーは Takram のビジネスデザイナーの佐々木康裕様です! 最近、岩嵜先生と共著も出されており、現在、読んでいます! レインボーにきらきらした銀色の表紙のやつです!!

……最終回なのでテンションを上げていこうと思いましたがキャラが合わなくてしんどいので、ふつうに最後までいつもどおりに書いていきますね。

講演内容について

「ビジネスデザイナー」っていろんなタイプがいるんですけど、僕個人に限って言うと、自分で手を動かしてデザインワークをすることは基本的に Takram ではゼロですね。伝統的な意味での、造形という意味でのデザインではなくて、物事を構想するとか統合するとか、そういう意味でのデザインを多くやっています。〔…〕特に僕のやっているタイプの仕事は公開できなくて、5年後、10年後の、たとえば、食品とか、モビリティとか、事業構想とか、アウトプットがビジュアル化できないものが多いんですね。法規制を睨みながらどうやってデジタル化するかみたいな戦略づくりもやっています。あとはメーカーさんに深く入り込んでお仕事をすることも多いんですけれども、3年後から5年後のプロダクト構想みたいなものを考えることが多いので、実際に世に出る頃にはだいぶ形が変わっていることもあって、自分の仕事のアプローチを伝えづらいです。クリエイティブの業界にいる人は、とにかくアウトプットとして誰かに見せられるものをつくるという考え方の人が多くて僕も公開できる仕事を増やしていきたいなと思いつつ、組織全体の未来の構想を作るとか、価値観を変える新たな取り組みを作るみたいなこと、見えないものをつくる役割を担っていて、それを仕事にしています。

ということで、最終回は、伝統的なデザイナーのお話ではなく「ビジネスデザイナー」のお話です。本研究科のスタンスを推察することはけっこう難しいですし、特に何か縛りがあるわけでもないのですが、一応、こうした「ビジネスデザイナー」の輩出をある程度念頭に置いているものと勝手に受け止めています。ちなみに本研究科のアドミッションポリシーは以下のとおりです。

総合的な造形教育によって得られる創造的思考力と現代社会に対する広範な知識を基盤として、現代文明のグローバルかつ加速度的な変化の中で、美術・デザイン領域を超えて、広く社会問題の解決や新たな人類価値の創出を行いうる柔軟な発想や構想力を有し、かつそれを高度に実践できる実行力、推進力、牽引力を備えた人材を養成します。造形構想研究科では次のいずれかの学力と意欲を持った学生を求めています。
・サービスデザインやデザインビジネス分野において、リーダーシップを発揮して新たな社会的価値や事業構想を具現化するための基礎的な能力・経験を持つ人
(武蔵野美術大学アドミッションポリシーhttps://www.musabi.ac.jp/admission/policy/)

が、個人的にはリテラシー的に必要とはいえ総合的に見て想像以上に「とにかくアウトプットとして誰かに見せられるものをつくる」ことが求められる印象を受けており、デザイナーのアブダクションという思考方法からしても自分で手を動かすことはマストかなと個人的には思っていたので、今回のご講演はなかなか新鮮でした。手を動かしている対象が違うだけのような気もしていますが。

質疑応答でもお話がありましたが、Takram の場合は伝統的なデザイナーとの緊密な協同関係が「ビジネスデザイナー」を成立させている要素として大きいのではないかと推測しています。公的機関や SMB など、デザインファームやエンタープライズのような伝統的デザイナーが在籍しうる会社でない場合は、このあたりはけっこう大きな課題になってくると思っており、私が現在抱えている悩みでもあります。それなので自分でやれるように試みるわけですが、メソッドの知見だけならともかく、スキルトレーニングの物量を確保することはなかなかしんどいんですよね……というより、従前、だいたいこういうのは特定領域で自己目的的に趣味でやっている人が突き抜けた結果としてデザイナーになっている気がしており、そうすると俯瞰的なコントロールないしディレクションという発想が希薄化する問題が……いやそういう発想をとらないのだと言われるとそんな気もするのですが……

この点に関連しそうではあるのですが、佐々木様はもともと新規事業を担当してきたとのことですが、留学されたイリノイ工科大学 Institute of Design (ID) について、次のように語っています。

よく「デザイン思考」を学びに行かれたんですか?と聞かれるんですけど、答えはイエス&ノーみたいな形でして、デザイン思考も one of them で、僕が行ったときは行動経済学の授業があったりしたので、色々なスタイルが組み合わされた新しいアプローチでした。これはすごく ID の特徴かなと思うのですが、「クリエイティビティなんて要らないんだ」って言い切る先生が何人かいて、創造性に依存しない再現性あるアプローチができるんだよ、と言う人が多くて、自分が創造性あふれるかというとそういうタイプではないので、ある種勇気づけられたし、ほかの人にプロセスや方法論を伝えることに非常に役に立った考え方かな、と。

「創造性非依存の再現性あるアプローチ」という点でプロトコルを重視するという考え方は、ご講演の中で繰り返しご紹介されました。質疑応答でもご回答をいただいていますが、何をデザインの対象にするかというところでアプローチ方法も変わるのでしょう。さらに突き詰めると、目に見えないものは、直接的なデザインの対象なのか、目に見えるもののデザインの効果として発生する間接的なものなのか、みたいな論点はあり、私がいまだによく理解できていないので、今後の検討課題にしたいと思います。

(執筆者:平塚翔太/本研究科 M1)

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