失恋墓地
「サングラスが欲しいな」
砂浜で眩しく光る、無数の宝石たちに目を細めた。
乗っていた船が嵐に飲まれ、海に放り出された俺はこの島に流れついた。
砂浜には宝石だけでなく、お揃いマグカップ、名前入りのブレスレットなど、恋が詰まった品々で溢れていた。どうやらこの島には、世界中の、恋に破れた男女が投げ捨てた思い出の品々が流れ着くらしい。
「いいなあ」
目の前に広がる、キラキラした失恋墓地を見て思った。今まで恋らしい恋をしたことがない。
「キラキラしたーい!」
海に叫ぶと、砂浜に鈍く光るガラスの物体を見つけた。ワインの空瓶だ。中には手紙が入っていた。その筆跡に見覚えがあった。
「母さんだ! まさか俺が死んだと思って」
震える手で手紙を読んだ。
『ともくん。元気にしてる? 優しいともくんには彼女がいなくてもいいと思うの。もう気にしてないから帰っておいで。
2月14日 母より』
瓶を逆さまにするとチョコレートが一つ、掌に転がった。
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