サラダバス
小学校の帰り。バスは今日も土の匂いがした。
「あら、トマト持っていって」
「うちのとこでとれた、レタスだ!」
近所のおじさんたちが自慢の野菜を僕にくれた。
野菜は苦手なんだけどな......
ーーポリポリ
音の方を見ると、サラダおじさんは、足場が丸っこい窮屈そうな場所できゅうりを食べていた。なぜサラダおじさんかと言うと、頭に真っ白なお皿をのっけてるからだ。おじさんは僕が野菜が嫌いなことを知ってて、ニヤニヤ見ている。
「よかったなあ、ぼうず。きゅうりはやらんぞ」
「いらないよ」
あ、そう、と言うとおじさんは再びきゅうりに向き直り、美味しそうに、きゅうりを丸齧りし始めた。
ーーポリリッ!
きゅうりの弾ける音が車内に響く。
僕はきゅうりが野菜の中で特に嫌いだ。それなのに、おじさんを見ていると、なんか......。
「おっと」
バスが揺れると、おじさんの頭のお皿から水が溢れた。そんなことはお構いなく、僕の目はおじさんのきゅうりに釘付けだった。