まるこ
就職活動中は、面接や試験等のため、
普段は行かないような街に行くことが多かった。
知らない街に降り立つのは、楽しいし、
こんな街があるのかと新しい発見もあった。
スーツに身を包むことは嫌いだったが、就職活動中の楽しみでもあった。
その日もスーツを着た私はある駅に降り立った。下丸子の駅に。
この駅に降り立った瞬間から、私は違和感とどうしようもない想像が
頭を離れなかった。
この駅名が気になった私は路線図の中にさらに
新丸子という駅もみつけてしまった。
しもまるこ、しんまるこ、まるこ、まるこ…
ちびまるこは、言わずと知れたキャラクター。静岡にうまれたおかっぱな女の子。割とごきげんな父と厳しめの母と姉。
意外につっこみがするどいおばあさんと俳句をしたためがちなおじいさんの愉快な大家族。ピーヒャラピーヒャラパッパパラパーである。
そのまるこを原型にしながらも新たなまるこ感を打ち出したのが新まるこ、
改め新丸子である。
昭和の時代のまるこがちびまるこなら、
新丸子はいわば平成のまることも言えよう。
昭和の時代には、大家族だったまるこ一家も核家族化し、一人っ子の新丸子。
父も母も共働きで遠く離れた静岡に住む祖父達と顔を合わせるのは、
年に一、二度。
そんな新丸子をも超える存在、下丸子。口を開けば下ネタばかり。
その丸子の発言すべてがピーという音が必要なほどで、周りからは、
歩く袋とじとさえ言われている。
丸子といえども、おかっぱで山口百恵に胸をときめかせていた
あのまるこの面影すらない。悲しい限りだ。
とまぁ、勝手な想像で頭を膨らせているのは、
就活生の中でもじゅんこ1人だけであるというキートン山田のナレーションが
頭に響きながら、スーツを着た頭の中はまるこでいっぱいの私は
試験会場に向かうのであった。
後半へ続く。(続かない。)