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巨大うさぎの国の阿呆
狸ファンタジーにすっかりハマった私は、
寝ても覚めても狸のことばかり考えていた。
現実も本の中でもこの世は狸と天狗と人間でまわっているのである。
手に汗、いや毛玉を握るスリリングな展開から一呼吸。
ショートケーキの上のイチゴを残すように贅沢に、
狸本の最後の一章を残して、ふと空想狸世界から現実狸世界に戻ってきた。
ふと目をやると、服をきたかわいいうさぎがいる。狸のことを考えすぎて、
狸が見えるならまだしも、目の前にいるのは白い、
そしてどこかでみたことのあるうさぎだ。
そのうさぎの後を追い、急いで荷物をまとめ、
大きな羽のついた乗り物に乗り込んだ。
その乗り物に乗り込んだ瞬間、狸病による睡眠不足のため失われた睡眠を
とり戻すべき、夢の世界へすぐ誘われた。
夢から醒めると、また白うさぎが走り出す、
どうやら私は異国の地に着いたらしいということがその冷たい空気からわかる。
周りを見渡すと、うさぎ、うさぎ、うさぎ。
街中には、歩行者信号の中にも人間ではなく、うさぎの姿、うさぎの銅像もある。同じ毛玉といえども狸とうさぎは大きく違う。
狸は化けることもあるが、うさぎはそうではない。愛らしい毛玉姿のままである。
しかも、この異国のうさぎは、とんでもなく巨大だ。
急いでグーグル先生で調べてみると、この国のうさぎの平均体長は、
オスが185cm、メスが170cm。
うさぎ達は、その体長分ある豊富な毛玉のおかげであたたかいようだが、
私は寒い。とりあえず、持参した服を重ねに重ねて着る。
それでもまだ寒いので、パジャマも導入。7枚重ねである。
ここまで重ね着すると、十二単を目指したく、なりません。
重ね着しすぎて、体の可動域が狭まり、一人二人羽織状態。
この国では生活に関するありとあらゆるものが、
巨大うさぎの体長にあわせてあるため、かなりの苦労を強いられる。
椅子、もちろんトイレも足がつかない。常に足がぶらぶら。
自転車のサドルからももちろん足がつかない。
ベットに寝転がるためにも、両手をつかって文字通りベットを
よじ登らなければならない。
顔を洗うときだって、洗面台が胸の位置にあるため、背伸びをして、顔を洗うし、エスカレーターの手すりの位置すらも高いので、絶妙なポージングのまま、
エスカレーターに乗ることになる。
大好きな古着屋の店内を物色する時ですら、
2段になっている上段の服を見るには、肩が必要以上あがるし、
一度取り出した服は戻すことすらままならないのである。
そんな巨大うさぎ達は、大量のビールとチーズ、
普通の葉っぱと食べると陽気になる葉っぱを主食にしているらしい。
うさぎの目が赤いのはビールの飲み過ぎが原因のようだ。
主食の葉っぱのせいなのか、元々の気性なのか、うさぎ達は非常に陽気である。
街中のいたるところで巨大なふわふわな毛玉達がはしゃいでいる。
うさぎにも狸と同じく阿呆の血が流れているのだろうか。
街中は、うさぎの主食である葉っぱの緑や新緑の木々、その間を流れる川、
赤白黄色以上のさまざまな色のチューリップ等、とても自然豊かである。
そんな自然と巨大な毛玉達の中でのんびり異国の地を満喫していると、
またとんでもない睡魔が私を襲う。
泥沼のような眠りから覚めた私の手には、狸本の最終章が開かれていた。
これまでの巨大うさぎの世界は白昼夢、いや毛玉夢だったのかと思うと、
テーブルの上にはあの白いうさぎのキーホルダーとチーズが。
どうやら夢ではなかったようだ。
巨大なうさぎの世界を経て、毛玉への愛着が深まった私は
再び狸世界に戻っていったのだった。現実でも空想の世界でも。