SNSがポピュリストに一方的に有利なわけではない
SNSプラットフォームによってポピュリストが台頭しやすくなった、というのはよく見る言説で、そういわれればそうなのかもしれないと納得しそうになる。先日公開された論文「Engaging Populism? The Popularity of European Populist Political Parties on Facebook and Twitter」は、2010年から2020年の間にヨーロッパ30カ国でフェイスブックとツイッター(当時はまだツイッターだった)上で活動していた400以上の政党をカバーする新しいデータセットを使用して、ポピュリズムとオンライン人気との関係について体系的に検証したものだ。
Davidson, T. R., & Enos, J. (2024). Engaging Populism? The Popularity of European Populist Political Parties on Facebook and Twitter, 2010–2020. Political Communication, 1–30.
https://doi.org/10.1080/10584609.2024.2369118
●概要
実はこの論文は有料公開であり、お金がないというのと、個人情報をそんなにばらまいていいのかという危惧もあって概要だけのチェックになっているのをお詫びする。
結果として、ポピュリストはフェイスブックで他の政党よりも多くのエンゲージメントを獲得していたが、ツイッターではエンゲージメントが有意に他の政党より多いことはなかった。右派ポピュリスト政党のみが広範な優位性を持っていたが、国や時期によって大きな違いがあることがわかった。たとえば、一部の国々では左派や中道政党の方が多くのエンゲージメントを獲得しているという事実もある。
マクロ経済の悪化や移民の増加がポピュリストのエンゲージメントと正の相関がある。インターネットやSNSの普及は、右派ポピュリストにはプラスに働くが、その他のポピュリストにはプラスにもマイナスにも働くという、混合的な影響があることがわかった。
本編を確認していないのだが、要約を見た範囲では、SNSが一方的にポピュリストにプラスというわけではなく、経済や移民などの社会的状況、右派と左派の違いなど複合的な要因によって変わってくるということらしい。
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