分極化を強めたり、弱めたりするのを「政治的意見を変える」と言うのはオーバーでは?

先月公開された論文「Social Media Algorithms Can Shape Affective Polarization via Exposure to Antidemocratic Attitudes and Partisan Animosity」https://doi.org/10.48550/arXiv.2411.14652 )をITmedia( https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2412/09/news046.html )がとりあげていた。わざわざ他に紹介記事があるのに取り上げた理由は、タイトルと内容がおかしかったからである。タイトルでは利用者の政治的意見を数日で変えると書いてあるのだが、記事本文には分極化、つまり、もともと利用者が持っている傾向を強化したり、弱めたりする効果があると書いてある。これって同じことではない気がする。
タイトルの「政治的意見を数日で変える」という文言でイメージするのは、「もともと反対の意見だった人が180度意見を変える」、「関心のなかったことにのめり込むようになる」といったもともともの傾向とは異なる意見を持たせることだと思うが、そのような内容はない
また、近年の一般的な論文などの検証結果の傾向は本文の方に近い。

この記事は2024年12月10日9時現在で、16万以上閲覧され、リポストはおよそ700だ。論文の内容は興味深いが、これまでの知見を裏付けるものであって、多くの人はタイトルのような劇的な変化をイメージしていたような気がする。まさに「SNSでは75%はクリックせずに共有する 特に保守」https://inods.co.jp/news/4667/ )だ。Xの投稿しか見ておらず、本文を見ていないような気がする。本文を読んだなら紹介しないか、タイトルとは異なることを書きそうなものだ。

あくまで私の憶測だけど、備忘録として残しておく。ITmediaの論文紹介は見てもはずれだ、と覚えておく。

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一田和樹のメモ帳
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