見出し画像

コロナ禍で中国やロシアが広めたQAnonの陰謀論 #非国家アクターメモ 2

前回のメモでQAnonの影響力の現状についてご紹介した。コロナ禍でのQAnonの拡大の要因のひとつに、中国を始めとする第三国からのデジタル影響工作があったことがわかっている。

Institute for Strategic Dialogue (ISD) の「QAnon goes to China – via Russia」(2022年3月23日、https://www.isdglobal.org/digital_dispatches/qanon-goes-to-china-via-russia/)によればもともとはQAnonは中国を敵視していたが、ロシアのウクライナ侵攻後にそれが変化していることを伝えていた。
また、国家情報長官室(ODNI)は中国が影響工作を行っていないという見解を示していた。
しかし、実はそれ以前から中国はQAnonに接近していた

前回、ご紹介した「QUANTIFYING THE Q CONSPIRACY: A Data-Driven Approach to Understanding the Threat Posed by QAnon」(Soufan Center、2021年4月21日、https://thesoufancenter.org/research/quantifying-the-q-conspiracy-a-data-driven-approach-to-understanding-the-threat-posed-by-qanon/)では、SNSのデータ解析からそのことが明らかにされていた。
中国、ロシア、サウジアラビア、イランがQAnonの陰謀論を拡散していた。
前回のメモでQAnonは人気のあるハッシュタグを利用していたことを伝えたが、QAnon自身も利用されていた。だが、こうした連携はおそらく互いにメリットのあつWinWInのものだったと考えられる。
2020年には投稿の44%はロシアから、42%は中国から、13%はイランから、そして1%はサウジアラビアだったが、その後中国は急速に活発に拡散するようになった。このタイミングは、COVID-19の拡散や人権侵害など、さまざまな問題によって米中間の政治的緊張が高まっている時期と重なっている。2021年1月1日から2月28日まで、投稿の58%が中国からであり、ロシアからの投稿の2倍以上になった。

「QUANTIFYING THE Q CONSPIRACY: A Data-Driven Approach to Understanding the Threat Posed by QAnon」(Soufan Center、2021年4月21日、https://thesoufancenter.org/research/quantifying-the-q-conspiracy-a-data-driven-approach-to-understanding-the-threat-posed-by-qanon/)


「QUANTIFYING THE Q CONSPIRACY: A Data-Driven Approach to Understanding the Threat Posed by QAnon」(Soufan Center、2021年4月21日、https://thesoufancenter.org/research/quantifying-the-q-conspiracy-a-data-driven-approach-to-understanding-the-threat-posed-by-qanon/)

この時期、中国が活発になったのはアメリカとの緊張が強まるにつれ、デジタル影響工作の強化したことと、SNSプラットフォームが関心がロシアに集中していたため中国発の工作になれていなかったことがあげられている。

このレポートはすぐに注目され、CNN「China and Russia ‘weaponized’ QAnon conspiracy around time of US Capitol attack, report says」(2022年4月19日、https://edition.cnn.com/2021/04/19/politics/qanon-russia-china-amplification/index.html)ヤフーニュース「Report: China, Russia fueling QAnon conspiracy theories」(2021年4月19日、https://news.yahoo.com/report-china-russia-fueling-q-anon-conspiracy-theories-090027767.html)などの記事になった。

コロナ禍における中国やロシアなどの支援を背景にQAnonは勢力を拡大し、同時に中国とロシアはQAnonなどアメリカの反主流派の支持を強めた。これがウクライナ侵攻にあたって、アメリカの反主流派が一斉に親ロシア反ウクライナの発言を開始した原因になっている。

世界各地で同時発生した反ワクチンから親ロ発言への転換(https://note.com/ichi_twnovel/n/nce3b3fc468a7)

拙著『ウクライナ侵攻と情報戦』でもこれらを解説したが、その際中国の関与までは書き切れなかった。
コロナ禍で勢力を拡大したのはQAnonだけではなかった。そして、そこにも第三国からの支援があったことがわかっている。次回はコロナ禍で拡大したQAnon以外のアメリカの反主流派をご紹介する。

本noteではサポートを受け付けております。よろしくお願いいたします。