見出し画像

気になった論文や記事2024年5月3日

4月27日から5月3日の間で気になった論文や記事を簡単に紹介。なお、私が先週気づいたということであって、先週公開されたとは限りません。


●ハリウッドスターの偽動画を使ったドッペルゲンガーの作戦

ドッペルゲンガーはしつようにさまざまな偽情報を流布しているが、ハリウッドスターの動画に偽の音声を吹き替えた動画をSNSで拡散しているのをNewsGuardが発見した。

Kremlin Hijacks Hollywood Stars
https://www.newsguardrealitycheck.com/p/kremlin-hijacks-hollywood-stars

●DFRLabがジョージア国内の緊張を煽るロシア語Telegramチャンネルをレポート

ジョージア国内では緊張が高まっているが、それをさらに煽るロシア語のTelegramチャンネルの存在をDFRLabが発見した。
2022年9月にロシアが予備役の動員を発表した後、多数のロシア人がジョージアに逃れた。最初の9カ月で150万人と言われている。その多くはロシアに戻ったが、2023年11月の段階で少なくとも4万人はジョージア国内に留まっている。このロシア人の中には工作員や過激派が紛れ込んでいる可能性がある。また、多数のロシア人がいることは、その保護を口実にロシアが侵攻してくる可能性もある。
さらに、それ以前の2023年3月からジョージア国内では抗議デモが行われるなど国内の緊張は高かった。その頃から2つのロシア語のTelegramチャンネルに対立を煽る動画が投稿され、抗議デモを煽るようになった。親ロ派と反ロシア派の集会を同じ場所で行うように誘導するなど、あからさまに衝突が起きることを狙っていた。

Russian-language Telegram channels foment tensions in Georgia
https://dfrlab.org/2024/05/01/russian-language-telegram-channels-foment-tensions-in-georgia/

●中国がネット企業に帯する規制を強化

大手中国系SNSが対象となる中国の国家機機密法が強化された。機密とされる情報が広がった。つまり検閲を強化することを目的としてしたものだ。

Beijing tightens grip on China social media giants
https://www.bbc.com/news/articles/cxe8dzz4jdpo

●ネオファシスト加速主義グループTerrorgram Collectiveをイギリスが規制

現在、Terrorgram Collectiveは暴力的過激派の中で影響力のある存在となっており、2022年には2人を殺害、2023年には変電所の襲撃を企てたことがある。今回の規制でイギリス当局は彼らのオンライン上の行動を制限することができるようになった。

UK Terrorgram Proscription: Useful, but limited tool to combat online network
https://www.isdglobal.org/digital_dispatches/uk-terrorgram-proscription-useful-but-limited-tool-to-combat-online-network/

●ブルッキングス研究所がロシアのプロパガンダメディアがTik Tokで広がっていることをレポート

ブルッキングス研究所は2024年最初の3カ月のTik Tokの投稿を分析し、ロシアのプロパガンダメディアがTik Tokでエンゲージメントを増加させていることを発見した。Tik Tokではアメリカの政治に関連した投稿トップ30のうち22がスペイン語ということも関係している。
ロシアは2024年に入ってからTik Tokへの投稿を増加させたが、それでもXやTelegramよりは少ない。にもかかわらず、エンゲージメントはTik Tokの方が多くなっている。

●影響工作が露見した後に最大の効果を発揮することがあり、国内の問題を安易に海外からの干渉によるものだと政治家やメディアが発表することはむしろ敵に利している

2024年5月3日に公開されたForeign Affairsの「Don’t Hype the Disinformation Threat」https://www.foreignaffairs.com/russian-federation/dont-hype-disinformation-threat )は偽情報を過小、過大評価も危ないとする記事。
偽情報そのものよりも偽情報があったということによって、不信感、警戒心が広がること方が危険であると指摘している。
また、昔からアメリカ国内の陰謀論者を海外の工作員が利用することがあった。工作員はすでに存在しているものを利用するのであって、工作員によって社会の分断や陰謀論の拡散が起きたことはほとんどないと指摘している。
さらに工作が露見した後に最大の効果を発揮することがあり、国内の問題を安易に海外からの干渉によるものだと政治家やメディアが発表することはむしろ敵に利しているのだとしている。
実は内容はほぼ以前の記事と同じ。お手軽に読むやすくてわかりやすいと思う。
誤・偽情報対策の決め手? 公衆衛生フレームワークは汎用的な情報エコシステム管理方法だった
https://note.com/ichi_twnovel/n/n51fa79a327ab
最近の論文や資料から見えてくるデジタル影響工作対策の問題点 偏りがあるうえ有効の検証が不十分
https://note.com/ichi_twnovel/n/nc658fc12d401

●今週の必読記事

今週は豊作。

誤・偽情報対策、認知戦対策の見直しが行われており、これはその中でもかなりきれいにまとまった論文
誤・偽情報対策の決め手? 公衆衛生フレームワークは汎用的な情報エコシステム管理方法だった

https://note.com/ichi_twnovel/n/n51fa79a327ab

中国のプロパガンダシステムの全体像をインタラクティブなモデルに整理した画期的な「Truth and reality with Chinese characteristics」
https://note.com/ichi_twnovel/n/n149da7e00d58

EUは危ない
国内が崩壊しつつあるのはアメリカだけではない ISDのイギリス国内過激派レポート

https://note.com/ichi_twnovel/n/n81b8e3074997
ドイツで成功した中国の影響工作
https://note.com/ichi_twnovel/n/n4428315cd4c1

アフリカの安価な労働に支えられるAI AIは偏見と権力をより強化する
https://note.com/ichi_twnovel/n/n0229d04047e5

好評発売中!
ネット世論操作とデジタル影響工作:「見えざる手」を可視化する
『ウクライナ侵攻と情報戦』(扶桑社新書)
『フェイクニュース 戦略的戦争兵器』(角川新書)
『犯罪「事前」捜査』(角川新書)<政府機関が利用する民間企業製のスパイウェアについて解説。

いいなと思ったら応援しよう!

一田和樹のメモ帳
本noteではサポートを受け付けております。よろしくお願いいたします。