拡大するネット世論操作代行会社 The New York Timesの「Disinformation for Hire, a Shadow Industry, Is Quietly Booming」
2021年7月25日The New York Timesは、「Disinformation for Hire, a Shadow Industry, Is Quietly Booming」(https://www.nytimes.com/2021/07/25/world/europe/disinformation-social-media.html)と題する記事でネット世論操作代行企業が世界各地で増加していることを伝えている。すでにニューズウィークに寄稿した記事「世界49カ国が民間企業にネット世論操作を委託、その実態がレポートされた」(https://www.newsweekjapan.jp/ichida/2021/01/post-17.php)で増加していることは伝えていたが、今回の記事は最新情報である。
追記 30カ国96件の影響力行使をまとめたプリンストン大学の「Trends in Online Influence Efforts」(https://note.com/ichi_twnovel/n/n8af80f2de789)でもネット世論操作代行会社への委託が増加していることが描かれていた。
これらの他に、インドの与党やエジプトの外交政策やボリビアやベネズエラの政治家を宣伝する同様のキャンペーン、ブラジルのセッラ市市長選キャンペーン、複数の競合政党を支援していたウクライナのネット世論操作代行会社、中央アフリカ共和国で2つの組織がそれぞれ独立して行った親フランス派と親ロシア派に偽情報キャンペーン、イラクの反米キャンペーンを行ったPR会社といった事例も報告されている。
またGraphika社によると「Spamouflage」というネットワークが発信した親中国メッセージが、パナマの大手メディア、パキスタンやチリの著名な政治家、中国語のYouTubeページ、イギリスの左派コメンテーター、ジョージ・ギャロウェイ、中国の外交関係者のアカウントなどによって拡散されている。同じ現象は台湾でも見られたという。
こうしたネット世論操作代行企業の特徴は、安価で手軽であることで、数万ドルで済むことだが、その一方であまり信頼できないため、依頼したあとで予算よりも高い費用を請求されたり、仕事が実行されないリスクもあるという。
●ネット世論操作代行会社の台頭が意味すること
ネット世論操作代行会社は新しく誕生している理由は、「SNS上で容易に事業を開始できる=SNSプラットフォームの規制はざる」、「儲かる=求める客がいる」ということである。
これらのネット世論操作代行会社の活動は社会における情報の信頼性を著しく毀損する可能性が高い。安価であることから、多数のネット世論操作代行会社に依頼を出し、その後、ネット世論操作代行会社の活動を暴露する情報を報道機関にリークすれば、「フェイスブックの影響工作レポートは安全保障関係者およびサイバー関係者必見の力作!」(https://note.com/ichi_twnovel/n/nc1e0c22aa003)で紹介したパーセプション・ハッキングができる。パーセプション・ハッキングとは、影響工作への不安を煽り、情報への不信感を増大させることだ。
さまざまな面でネット世論操作代行会社の台頭は情報空間を危険にさらすことになる。
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