インドIT for Changeのプラットフォームとデジタル規範を軸とした地政学的レポート

インドのIT for Changeの「Report on Developing Countries in the Emerging Global Digital Order」(2017年2月、https://itforchange.net/developing-countries-emerging-global-digital-order)はいささか古いレポートだが、インドならではのアプローチがわかりやすく紹介されている。

アメリカと中国だけが事実上世界でデジタルプラットフォーム企業を多数抱える国家であり、それ以外の国家は異なる戦略を持たなければサイバー空間で遅れを取ることになる。インターネット・ガバナンスに関する議論は、そのひとつの現れだ。EUはデータおよび人権に基づいた保護を訴え、インドはデータは本人および所属コミュニティに帰属するものであり、プラットフォーム企業は帰属先にデータを提供する義務を負うと主張している。IT for Changeは、その主張を体系化して展開している。

日本が完全に出遅れた第三次プラットフォーム戦争https://www.newsweekjapan.jp/ichida/2021/05/post-23_5.php

現在の世界秩序はグローバルノースが作っており、グローバルサウスはその路線に従うしかなくなっている。プラットフォームもグローバルノースに占められている。グローバルサウスはインターネット・ガバナンスに関してもグローバルノースに牛耳られてきた。数で圧倒するグローバルサウスがインターネット・ガバナンスの領域で影響力を行使する場面もあったが、主役となるほどにはなっていない(くわしくは、この記事を参照、https://note.com/ichi_twnovel/n/nc8aee6dfeb59)。

●プラットフォーム化は、2つの大きな影響を与えるとレポートは指摘している。ひとつは、ある分野がデジタル変革を遂げるとき、プラットフォームを中心に組織化される。たとえば、情報はグーグル、メディアはフェイスブック、都市交通はUber、短期宿泊施設はAirbnbが「プラットフォーム」となっている。同じことはすべてのセクターで起こる

ふたつ目は、プラットフォームはセクターを独占し、セクターごとの膨大な量のデータを収集する。その結果、アルゴリズム、人工知能などを高度化し、インテリジェンスを生成する。データから得られるインテリジェンスは指数関数的に蓄積されるす。デジタル・インテリジェンスがプラットフォームに集約され、商品化されることで、収益性と耐久性において他を凌駕するビジネスとなる

●全体像が見えない国々
これに対して多くの発展途上国は、ある時は経済的便益の追求、ある時は情報空間の偽情報対策というように、個々に対応し、地理経済的、地政学的な観点に欠けており、全体像を見失っている。結果として、グローバルノースのプラットフォームに依存し、データと収益を提供するだけのデジタル植民地とでも言うべき存在となってしまっている。

レポートでは途上国自らが意識を持つことと、グローバルノースと対等の国際的な規範を醸成してゆかなければならないとしている。実はレポートでは、デジタル規範についてもっとも多く書かれているのだが、多くの方には興味ないと考えて割愛した。おおまかには前の記事の表に書かれていることの解説である。

おそらく日本もまた全体像が見えていない国のひとつであり、こうしたことからもすでに途上国化していることがわかる。このレポートではプラットフォームを持つ国に、他の国の頭脳も流出してゆくと書かれている。日本の人材も流出していそうだ。

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