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学術誌の悪辣な商法の告発 利益率40%の版元も

ネイチャーやサイエンスという科学誌の名前を知っていても、そのビジネスの内容を知らない人は多いと思う。私もそうだ。悪い噂を聞いたことがあったら、それはほとんどぼったくりや詐欺に近いものでとうてい信用できるものではなかった。しかし、この記事を読む、いくつか他の記事に当たってみて、悪い噂はほんとうだったとわかった。よくわかっていないので、気になった人はご自身で調べることをおすすめします。

●コストを研究者や大学や研究機関に負担させるビジネスモデル

科学誌では掲載料は払わないで取るものらしい。でも有料で販売する。オープンアクセス(無償)で公開の場合は、莫大な研究者に莫大な負担をさせる。たとえばネイチャー誌にオープンアクセスの論文を載せるには100万円以上を支払うことになるらしい(APCと呼ぶらしい)。
ちなみに論文が有償で公開された場合、5千円くらいする。大学や研究機関に所属して潤沢な予算が無い限り、買い続けるのは無理だろう。毎月40本は読んでいるので全部有償だったら20万円を毎月払うことになる。

なんとなく科学誌は良心的なイメージを持っていたが、科学誌の主要版元の利益率は40%と聞いて、考えをあらためた。

2024年7月16日Guardianに掲載されたArash Abizadehの「Academic journals are a lucrative scam – and we’re determined to change that」https://www.theguardian.com/commentisfree/article/2024/jul/16/academic-journal-publishers-universities-price-subscriptions )その現状を告発し、自分たちが始めた試みを紹介している。

Elsevier、 Wiley、 Taylor & Francis、 Springer Nature、 SAGEといy5大出版社がこの高利益のビジネスを展開している主たる企業だ。それぞれ数千億円を売上、利益率は40%を超える企業もある。イギリスの大学は10年間でおよそ2千億円を科学誌などに支払っており、その90%はこの5社に流れている。さらにオープンアクセスのために年間200億円以上を支払っている。

現在、著者たちは大学などの関係機関が直接より安価なコストで科学誌を支援するというモデルで、オープンアクセスが基本になる。とてもよい話だが、ここにひとつ問題があって移行はなかなか進んでいない。科学誌のブランドと権威が研究者としてのキャリアップに重要な役割を果たすのだ。そのせいで実績のないところに論文を載せたがらない。しかし、このままでいいわけはない。

参考
ネイチャー誌は120万円、セル誌は110万円、サイエンス誌は?
、 https://rcos.nii.ac.jp/miho/2021/01/20210121/

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