コミュニティノートはフラグやラベルよりも効果があるという論文
Community notes increase trust in fact-checking on social media
https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgae217
フラグやラベルをつけることが効果があると信じる人が増えている。この論文はそれらとコミュニティノートの効果を比較、検証したものだ。
1,810 人のアメリカ人に、誤解を招くソーシャルメディア投稿と誤解を招かないソーシャルメディア投稿 36件を提示し、さまざまな種類のファクトチェック的な介入の効果を測定した。すべてXで実際に使用されているものを使った。
その結果、テキストベ ースのコミュニティノートは、フラグよりもはるかに信頼できると認識されることがわかった。専門家によるフラグと利用者によるフラグの間にはわずかな違いしか見られなかった。信頼性の向上は、誰がファクトチェックするかではなく、提供される文脈に主に影響されていることを意味する。
また、異なるプレゼンテーション形式、つまり、テキストベースの説明のみを提示するコミ ュニティノートと、ラベルとテキストベースの説明を組み合わせたコミュニティノートとの間では、信頼性に大きな違いがあった。
ソーシャル メディアでの事実確認では文脈が重要であり、テキストベースのコミュニティノートをユーザーに公開することが、単純な誤情報フラグよりも効果的なアプローチになる可能性があることを示している。
コミュニティノートの利点は、ファクトチェックされた投稿と被験者の政治的指向の一致に依存していた。政治的指向が一致する誤情報についてはユーザーの評価が比較的正確になる効果が認められるが、政治的に一致しない誤情報については効果はなかった。たとえば、コミュニティノートは、党派的な誤情報(例:トランプ支持者がコロナの誤情報にさらされる)に対するファクトチェックへの抵抗に対抗するのに特に役立つ可能性がある。この点は期待できる。なぜなら、政治的に一致する誤解を招く投稿は、人々がソーシャ ルメディアで信じて共有する可能性が高いタイプの誤情報でもあるからである。逆に、政治的に一致しない誤情報 (例: COVID-19 の誤情報にさらされたバイデン支持者)に対しては役に立たない。
この論文は、コミュニティノートの効果と真偽判定能力は分けて考えた方がいいような気がする。たとえばコミュニティノートは政治的に異なる主張を論駁するのに最適のツールであるというだけかもしれない。
ファクトチェックは中立ではなく、党派性のあるものだという前提に立てば、この論文はすごく役立つかもしれない。
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