ウクライナとロシアにおける義勇兵の状況 #非国家アクター メモ 6
ウクライナ侵攻後、世界各国から義勇兵が大量に集まっているという報道が目につくようになった。
「「ウクライナの外国人義勇兵」増加で高まる、世界的なテロリスク」(ダイヤモンド・オンライン、2022年3月16日、https://diamond.jp/articles/-/299171)、「ウクライナ義勇兵、世界から2万人志願 カナダだけで1個大隊が現地入り」(ニューズウィーク日本版、2022年3月16日、https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/03/21-47.php)、「ウクライナ 最後のチャンスにかけた外国人義勇兵たち」(GQ、2022年10月10日、https://www.gqjapan.jp/culture/article/20221010-ukraines-last-chance-brigade)などなど。
果たして本当にそんなにたくさんの義勇兵が現地に赴いているのだろうか?
Soufan Centerによると、2014年から2019年にかけて50カ国以上から1万7千人以上の戦闘員がウクライナに渡航している。ただし、これは今回のウクライナ侵攻の前の話である。
Counter Extremism Projectの「WESTERN EXTREMISTS AND THE RUSSIAN INVASION OF UKRAINE IN 2022」(https://www.counterextremism.com/content/western-extremists-and-russian-invasion-ukraine-2022)によると、一般に報道されているようにウクライナ義勇兵に志願したものは2万人だとしても、実際に渡航したのは数百人から数千人と推定しており、これはウクライナを守るため祖国に戻ったウクライナ人数万人に比べるとかなり少ない数字だ。
2022年の志願兵は大きく3つに分けて考えられる。もっとも数が多いのはウクライナ人もしくは二重国籍者、ふたつ目はボランティア、3つ目は暴力的な過激派である。
白人至上主義過激派グループなどの過激なグループは少ない。というのも現在はウクライナに渡る義勇兵の多くはウクライナ政府の公式ルートで応募することが多く、2014年頃のような義勇軍や民兵組織による応募はあまり行われていないためである。現地で活動している白人至上主義過激派グループのメンバーもいるが、多くはウクライナ侵攻より前にウクライナ入りしていた。
2014年頃外国人を募集していたのはAzovであるが、今回は国内に焦点をあて外国人の募集は積極的には行っていないようだ。外国人は20名程度に留まっている。もっとも多くの外国人が参加している非国家組織はジョージア国民軍で侵攻前から志願兵を募っていた。単独の部隊として戦闘するのではなく、各地にメンバーを派遣している。SNSを活用した募集を熱心に行っている。
2014年の募集では春から夏にかけてピークに達しており、主として義勇軍や民兵組織といった非国家組織の募集に応募していた。数百名程度の欧米からの志願者がウクライナとロシアの両方に別れて戦闘していた。この時のメンバーはその後、自国に戻ってから大きな脅威とはならなかった。
結論としては、確かに国外から義勇兵は多数参加しているが、そのほとんどはウクライナ人か二重国籍者であり、外国人の割合は少ない。応募の窓口としては、ウクライナ政府の公式ルートがもっとも多く、次いでジョージア国民軍となる。
また過激派グループも少ない。外国人義勇兵だけを集めた部隊があるわけではなく、さまざまな部隊に送られている。
ということらしい。
ニューズウィーク日本版のカナダだけで1個大隊というネタ元はNational Postというジャーナルで保守系のバイアスが指摘されているものだったので、他のメディアか公式発表を探したが、見つからなかった。
関連記事
フォーリンアフェアーズとワシントンポストが主流になったと報じたQAnonの現在 #非国家アクターメモ 1
コロナ禍で中国やロシアが広めたQAnonの陰謀論 #非国家アクターメモ 2
アメリカ社会を崩壊させるRMVEs #非国家アクターメモ 3
アメリカの白人至上主義過激派グループを支援するロシア #非国家アクター メモ 4
穏健化する白人至上主義と過激派 #非国家アクター メモ 5
鈴木エイト『自民党の統一教会汚染』拝読。
我が国で高まるサイバー脅威「インフルエンスオペレーション」ウェビナー資料
本noteではサポートを受け付けております。よろしくお願いいたします。