ロシアが一時占領地域(Temporary Occupaid Territories = ToTs, クリミア、ドンバス、ルハンスク等)で行ったメディア戦略に関するレポート
CIR と ウクライナのメディアとジャーナリズムについてのNPO Detector Mediaの共同レポート「Information warfare: five ways Russia captured Ukrainian media」( https://www.info-res.org/post/information-warfare-five-ways-russia-captured-ukrainian-media )が2024年7月12日に公開されていた。
このレポートは、ロシアがウクライナのクリミア、ドンバスおよびルハンスクの一部とその他の地域)を占領した際に行ったメディア統制と世論操作に関するものである。
●概要
レポートそのものはかなりの力作で量が多いうえ、さらにメディアとその関係者、関係機関をインタラクティブマップで確認できるようになっている。
レポート本編は下記からダウンロード可能
https://www.info-res.org/post/mapping-the-media-landscape-in-ukraine-s-temporarily-occupied-territories
インタラクティブマップ https://cen4infores.graphlytic.cloud/visualization?vis=139&p=1
このレポートではロシアが占領している地区をTemporary Occupaid Territories=ToTsと呼んでおり、それらの地区を支配するためにメディアの掌握を通じた住民への影響力拡大は優先されたもののひとつだった。ロシアが情報空間を支配することは「認知的占領(cognitive occupation)」と呼ばれるロシア流の方法論だった。
・ロシアの認知的占領5ステップ
ロシアがメディアを掌握した手順は大きく5つのステップに分けられるが、必ずしも全く同じではなく、状況に応じて変化していた。
1.インフラの占拠
役所、市長室、病院、大学、学校など公共施設などの主要なインフラを物理的に支配し、地元メディアを掌握するための基盤を手に入れた。中にはロシアが知事などの役職者を任命し、メディアを操るために手助けさせることもあった。
2.メディア支配
ウクライナ人の協力者を使いながら、公共および民間のメディア・アセットやインフラ(電波塔、放送局、オフィス、スタジオなど)を手に入れた。また、ウクライナよりも強力な電波を発信するテレビ塔を建設し、放送を妨害することもあった。同様のやり方はラジオ放送に対しても用いられた。
3.占領地外のウクライナからの情報を遮断
占領地区の外のウクライナのメディアを遮断し、必要に応じてモバイル通信も遮断した。並行して、親ロシアメディア組織を作った。
4.親ウクライナの声を封じる
親ウクライナのジャーナリスト、活動家、宗教家などを特定し、誘拐、口封じ、協力の強制などを行った。拷問や親族への脅迫も行われていた。この活動は何度も繰り返された。
5.ロシアやその他のToTsから人材を送り込む
チャンネル、ジャーナリスト、メディア関係者などが外部から持ち込まれた。ロシアは親ロシアのジャーナリストを育成しており、こうした人々がかり出された。
メディア支配に際しては、地元のメディアのオーナーを追い出して手に入れ、ブランドなどはそのままに親ロシアの記事を掲載するようにしていることもあった。
・メディア支配について
ロシアはドネツクのRepublican Media Holding (RMKh)とルハンシクのLuganmediaというふたつのメディアホールディングスを通してメディア支配を行っている。
メディアの従業員は大きくふたつに分けられ、ひとつはもともとウクライナのメディアに勤務していた編集者などは大量に解雇されたため、新たに募集を始めた親ロシアのメディアに参加した。もうひとつは新人で、これまでメディア業界での勤務経験のない者だ。
前者(もともとウクライナのメディアに勤務していた者たち)は同じポストに就職できたり、大幅な昇給を得たりした。
Telegramの親ロシアチャンネルとToTsのメディアは相互に接続されていることが確認されている。
・必ずしもうまくはいっていないらしい
レポートでは、運用の見直しが行われていることから、必ずしもうまくいっていないことが示唆されている。
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