なぜ、メタアナリシスやシステマティックレビューをしないのか?
先日、「Misinformation is a threat to society – let’s not pretend otherwise」( https://blogs.lse.ac.uk/impactofsocialsciences/2024/10/08/misinformation-is-a-threat-to-society-lets-not-pretend-otherwise/ )という論考が公開された。文字通り、偽・誤情報関連の調査研究を見直す動きに異議を唱えるものとなっている。
メタアナリシスやシステマティックレビューをすると見直しを言わざるを得ない
書いてあることはおそらく間違っていないし、正しいのだけど、問題の設定が実態と異なっていると思う。この著者は、偽・誤情報関連の調査研究を見直す動きが、「偽・誤情報は脅威ではない」、「偽・誤情報はきわめて少ない」、「偽・誤情報が問題なのではなく、その背景にある社会的課題が問題」といった一連のトピックスについてひとつひとつ反証となるような論文などを紹介して反論している。
問題は、偽・誤情報関連の調査研究を見直す動きも、それに対する反証もピンポイントでとりあげているだけで、全体を示していない。メタアナリシスやシステマティックレビューを行っていないため、都合のよいものだけを取り上げている可能性がある。
たとえば、少なくともこれらと異なる主張で見直しを提案している論文や記事を何度も見ている。見直しに対する反論は何度か見たが’、いずれもメタアナリシスやシステマティックレビューに基づくものではなかった。これに対して、見直しを提案する論文などではメタアナリシスやシステマティックレビューを行っているものがいくつもある。というか、単純に過去の偽・誤情報に関する調査研究を一通り見れば、カテゴリーや地域などに大きな偏りがあることがすぐにわかるから、嫌でもメタアナリシスやシステマティックレビューを行った研究では見直しを言わざるを得ない。見直し反論の際に、メタアナリシスやシステマティックレビューをしないのはそれがわかっているからなのかもしれない(大変よくないことだと思う)。
日本のプロジェクトではメタアナリシスやシステマティックレビューしない
私は基本的に日本の資料をあまり読まないのだけど、総務省とか、前回取り上げた理解できない資料など大事そうなものは読んでいる。
すごくお金も人もかかっていて、そのために調査しているのだが、メタアナリシスやシステマティックレビューはしない。文献調査をしていることは多いからそれがサブセットのつもりなのかもしれない(全然違うけど)。絶対やらなければいけないわけではないけど、自分たちがやろうとしていること、根拠にしている先行の調査研究の意味や位置づけは確認しないとまずいと思う。
プロジェクトはメタアナリシスやシステマティックレビューの例
過去にこのnoteで紹介したプロジェクトはメタアナリシスやシステマティックレビューには下記のようなものがある。参考になるかも。
アメリカの誤・偽情報研究の後退に対する危機感と、真逆の日本についていくつかの論文とレポート 後段で2つくらい論文を紹介している。
誤・偽情報についての研究がきわめて偏っていたことを検証した論文
学術研究の不正行為 25,710件をマッピングしたら、電気・コンピュータサイエンスで次は臨床・ライフサイエンスだったという論文 偽・誤情報関連論文の多くはもっとも不正行為の多いコンピュータサイエンスだし、スポンサーはSNSプラットフォームだし、まあ不正行為多いよね。
10の偽情報対策の有効性やスケーラビリティを検証したガイドブック
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