台湾併合のための沖縄認知戦が本格化してきているという話
沖縄(琉球)独立といってもピンと来ない人がほとんどだと思う。しかし、いま、中国が仕掛けているのは沖縄(琉球)独立あるいは先住民として認めさせることなのだ。もちろん、その目的は、日本を単に混乱させるなどといったことではなく、台湾併合である。中国は台湾併合に向けて、さまざまな手を総合的に打っており、沖縄はその中でも重要なもののひとつだ。なぜなら、沖縄の米軍基地が使用できない、あるいは使用が制限されれば台湾有事の際の軍事的対応に問題が生じる。
なぜかあまり日本では沖縄と台湾併合についての話を見ることはあまりなく、さらに中国の認知戦との関係になるとさらに少ない。しかし、アメリカにはけっこう資料がある。
●中国の狙い
前述のように中国の狙いは沖縄の米軍基地を使用に制限をかけることだ。たとえば沖縄県民あるいは日本国民全体が米軍基地について疑義を提示し、基地の利用に制限をかけたり、追い出したりするという直接的な方法もある。しかし、そこまでわかりやすく、直接的なことは難しい。そこで、さまざまな搦め手を使ってくることになる。
・沖縄(琉球)独立
・先住民問題
・国際世論形成
・沖縄以外の日本の世論の分断
●沖縄(琉球)独立
沖縄県民の多くは独立を望んでいないし、日本国民の多くもそんなことは考えたこともないだろう。しかし、海外では琉球独立に熱心に取り組んでいる人々がいる。有名なのはRob Kajiwara(ロバート・カジワラ、比嘉孝昌、魏孝昌、梶原孝昌など)だ。ハワイ生まれの日系4世。Weiboで124,000人を持っており、琉球独立を熱心に訴える他、これまで沖縄は日本から虐げられてきたと訴えている。米軍基地反対の署名を20万人以上から集めたこともある。国連で演説を行ったりしている。2019年には沖縄からすべての米軍基地の撤去と、独立を求める団体「沖縄平和連合」を設立した。ハワイ、アラスカ、西パプア、カタルーニャ、カシミールなど、独立運動を行う他の地域との連帯も表明している。アメリカの親中NPOのコード・ピンクやノー・コールド・ウォーなどとも関係がある。
現在、中国の国外に多数の親中インフルエンサーが存在しており、彼もそのひとりだ。これらは積極的に中国政府の意向に沿った言説を拡散している。多くのインフルエンサーは中国政府と関連がなく、意向に沿った投稿は中国政府から目を付けられることなく、拡散を後押ししてくれるという経済的動機あるいは承認欲求に基づいている。
●先住民問題
2008年以降、国連は日本に対して沖縄に住む人々を先住民とみなす勧告が6回出している。外務省はこれに対して、先住民という認識はないとしてきている。私は専門家ではないので、どちらなのかはわからないが、仮にそうなった場合、日本政府は言語の保存など必要な措置を執らなくてはいけなくなるし、そもそも不当に支配しているという指摘も出て来そうだ。そして、軍事施設は撤去しなければならなくなる(そうすべきと迫られる)。前述のRob Kajiwaraの活動はこれとも連動している。
●沖縄県民の不安と平和の希求につけ込む
世論調査によれば、沖縄県民の多くは中国によい印象を抱いておらず、独立の意思もない。しかし、台湾有事によって沖縄に戦禍がおよぶことを恐れている。6月の世論調査では、沖縄県民の70%が、米軍施設が沖縄に集中していることを「不公平」だと考えていることが分かった。さらに83%の人が、米軍基地は「有事の際には攻撃の標的になる」と考えている。
有事となった場合は地理的に沖縄に戦禍が及ぶ可能性は高く、米軍基地が戦いの貯めに使用されることになれば攻撃対象になる懸念もある。沖縄県民の不安は中国が軍事的示威行動を行うほど高まるので、中国にとっては認知戦を仕掛けやすい。軍事的優位が政治的勝利を後押しする。
沖縄県知事は中国および他の国と積極的につきあい緊張を和らげようと試みている。県知事の訪中もそのひとつであるが、中国側のプロパガンダに利用され、日本国内の右派の反発を呼び、分断が広がっている。
●沖縄以外の日本の世論の分断
ここまでの3項目は沖縄県民の意識とは関係なく、日本国内の右派には「反日」的に映る。当事者の意識を無視して沖縄以外の地域で世論が分断される可能性がある。
●国際世論形成
沖縄県民の意向を無視して、沖縄の先住民としての権利を擁護すべきという主張と日本政府への批判が仕掛けられる可能性がある。前項のインフルエンサー以外に、すでに中国はアメリカ国内に、コード・ピンクやノー・コールド・ウォーといったNPOのネットワークを有しており、効果的に世論操作を広げる素地ができている。
また、沖縄の先住民としての権利を認めるならば反中であってもかまわないので、スティーブ・バノンや共和党がこうした動きに追随する可能性はありそうだ。複雑になり、混乱が広がるほど、日米は動きが取りにくくなる。
国連の勧告通りに解釈すれば、沖縄は日本政府が理不尽に支配下においており、本来は先住民が自らの意思で自治を行うべき土地ということになる。つまり、日本にとっての沖縄は、中国にとっての台湾のような存在になる。正確には違うが、日本と沖縄の歴史を知らない多くの国にとって、その違いはあまりないかもしれない。
●中国は有事を起こす気はないが、軍事的優位性をフルに活用しようとしている
現在のところ、ごく一部をのぞいて当事国に有事を望んでいる勢力はない。中国にとっての認知戦は、「軍事的優位を政治的勝利に結びつける」ことであり、台湾や日本はそのターゲットになっている。
くわしくは、こちらを参照
ペロシ訪台につけこんで軍事上のレッドラインを押し上げた後、沖縄の帰属、独立、先住民問題などを畳みかけて、動きずらい状況を作る。並行して、軍事的威圧の継続と、周辺国へのサインバー攻撃と影響工作の強化、そして正体を隠しての経済的基盤への侵入、データ収集といった行ってきた。
おおげさや脅しでなく、ほぼすべての日本国民のかなり精緻なデータまで把握され、利用可能な状態になっているはずだ。中国はそのデータを使って、上記の活動を緻密に行うことができる。もっとも現場が緻密に行動するかどうかわからないのだが。
関連記事
中国の認知戦の動向に関するメモ、 https://note.com/ichi_twnovel/n/n1cfd32acb0f3
中国の情報戦の新手法 フロンティア・インフルエンサー、辺境インフルエンサー ASPIレポートより、 https://note.com/ichi_twnovel/n/n305b9237a4f5
昨年に比べ体系的整理の進んだ大西洋評議会の中国言論戦略分析レポート、 https://note.com/ichi_twnovel/n/n261282ba7ce9
中国国家安全部(MSS)のSonarX、 https://note.com/ichi_twnovel/n/n3e1b7203af3e
「From Coercion to Capitulation」が描く非軍事手段による台湾併合シナリオ
https://note.com/ichi_twnovel/n/n72995d4e05b8
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『犯罪「事前」捜査』(角川新書)<政府機関が利用する民間企業製のスパイウェアについて解説。
出典
抖音上,中國對日本的「沖繩認知戰主旋律」:該回歸的不只台灣?
https://www.twreporter.org/a/taiwanyuji-china-cognitive-warfare-forward-okinawa-japan
China is winning online allies in Okinawa’s independence movement
https://www.axios.com/2023/12/20/rob-kajiwara-okinawa-japan-china-independence
Okinawa Is in the Crosshairs of China’s Ambitions
Okinawans continue to pay the price for being caught between great powers.
https://foreignpolicy.com/2023/04/07/okinawa-japan-china-us-bases-soft-power/
The Japanese Island of Okinawa Is Caught in the Middle of U.S.-China Tensions
https://pulitzercenter.org/stories/japanese-island-okinawa-caught-middle-us-china-tensions
Is Beijing about to ‘play the Ryukyu card’ over Tokyo’s stand on Taiwan?
https://www.scmp.com/news/china/diplomacy/article/3278832/beijing-about-play-ryukyu-card-over-tokyos-stand-taiwan
China’s Okinawa Policy Attracts Attention
https://thediplomat.com/2023/07/chinas-okinawa-policy-attracts-attention/
「琉球独立」あおる?◇中国で強まる日本の領有権懐疑論【中国ウオッチ】
https://www.jiji.com/jc/v8?id=2024-04-12-china-watch
「誤った発信撤回を」 仲村氏、国連での活動報告 沖縄先住民族
https://news.yahoo.co.jp/articles/b9d43720b3fdccdb0f31bad8d12bf0f6b26dcc45