AIが支援するピンクスライム・ジャーナリズムを支援する保守 アメリカローカル紙の変容
●概要
2004年以来、2,000以上の地方紙が姿を消している。党派的でデジタルファーストのジャーナリズムがその変わりに生まれてきた。新しいローカル紙が増加していることで地域の情報空間が変化した。特に問題視されているのが「ピンクスライム・ジャーナリズム」の台頭である。ピンクスライムとは、クズ肉を元に作られたきめの細かい加工肉をさす言葉で挽肉の増量などに用いられる。質の悪い記事を量産することからこの呼び名がついた。
アメリカのピンクスライム・ジャーナリズムの大手Metric Mediaは1,200のサイトに記事を配信している。その記事のほとんどはAIによって自動生成されたもので、そうでない記事は党派性の高いものとなっている。
ニュースサイトらしい体裁を備えているため、初見では肯定的な印象を持つ利用者が多いという調査結果が出ている。ただし、繰り返し使ううちにじょじょに不信感が募ってくる。それでも最後の段階で中立的といった肯定的評価の利用者も一定数いた。地域において一定の影響力を持っている可能性がある。運営資金は保守系の団体から得ており、党派性のある記事は保守を支持するものが多い。
Metric Mediaの他にも、American Catholic Tribune Media Network、Star News Digital Media network、The Center Square などの保守系の支援を受けているネットワークが多い。Star News Digital Media network は「ベイビー・ブライバート」(ブライバートはアメリカの大手右派サイト)と呼ばれているくらいだ。こうした保守的ネットワークは全米50州に広がっている。
ピンクスライム以外に、比較的ジャーナリズムの基本に合った党派的なニュースもあるが、ピンクスライムとの区別ついていないことも少なくない。
また、最近ではいわゆるクリック稼ぎのためにAIの生成した記事を掲載するサイトも増加しており、もはやアメリカのローカル紙はかつてのニュースや報道とはほど遠いものになっており、その多くが保守的傾向を持つ団体から支援を受けている。
感想と言うほどのことではないが、日本のローカル紙は大丈夫なんだろうか? こたつ記事の次はもうAI生成の保守記事になるしかない?
出典
The rise and rise of partisan local newsrooms
https://www.cjr.org/tow_center/the-rise-of-partisan-local-newsrooms.php
The Metric Media network runs more than 1,200 local news sites. Here are some of the non-profits funding them
https://www.cjr.org/tow_center_reports/metric-media-lobbyists-funding.php
How the Collapse of Local Newsrooms Made All Politics National
https://www.cjr.org/the_media_today/local_media_collapse_presidential_primaries.php
The Future of ‘Stop the Steal’: Post-Election Trajectories for Right-Wing Mobilization in the United
https://acleddata.com/2020/12/10/the-future-of-stop-the-steal-post-election-trajectories-for-right-wing-mobilization-in-the-us/
地方紙のサイトが“生成コンテンツ”を大量発信、AIを用いた「クリックベイト工場」の秘密
https://wired.jp/article/iowa-newspaper-website-ai-generated-clickbait-factory/
好評発売中!
『ネット世論操作とデジタル影響工作:「見えざる手」を可視化する』(原書房)
『ウクライナ侵攻と情報戦』(扶桑社新書)
『フェイクニュース 戦略的戦争兵器』(角川新書)
『犯罪「事前」捜査』(角川新書)<政府機関が利用する民間企業製のスパイウェアについて解説。
本noteではサポートを受け付けております。よろしくお願いいたします。