Centre for Information Resilienceの中国のネット世論操作の最新レポート「Analysis of the Pro-China Propaganda Network Targeting International Narratives」

2021年8月4日に、Centre for Information ResilienceはAnalysis of the Pro-China Propaganda Network Targeting International Narratives」(https://www.info-res.org/post/revealed-coordinated-attempt-to-push-pro-china-anti-western-narratives-on-social-media)を公開した。中国のネット世論操作について幅広く分析しており、中国の行っているネット世論操作のトピックスを下記のように整理している。
*なお、最近のデジタル影響工作の全体的な動きについては下記をご参照ください。
30カ国96件の影響力行使をまとめたプリンストン大学の「Trends in Online Influence Efforts」
フェイスブックの影響工作レポートは安全保障関係者およびサイバー関係者必見の力作!

- アメリカとCOVID-19
- 新疆ウイグル自治区と人権に関するアメリカの主張
- アメリカと銃法
- アメリカと差別
- アメリカとインド COVID-19
- Li-Meng Yan(中国のウイルス学者で中国の研究所でウイルスが作られたと主張している)
- Guo Wengui(中国の実業家でアメリカに亡命した)
- 香港の民主化運動
- アメリカと中国の関係
- アメリカと世界の紛争
- アメリカと暴力

これらのトピックスに関して、ツイッター、フェイスブック、YouTubeで親中国の情報を発信している。発信に際しては、偽のアカウントや再利用されたアカウントを使うことが多い。多くの投稿は英語と中国語でなされ、内容は中国政府や中国メディアの内容と類似している。
こうしたネット世論操作は、欧米のソーシャルメディア上で一貫して存在感があり、2017年4月から始まっている。現在行われているのネット世論操作は、過去に行われていた活動と同じ特徴を持っており、過去の活動の延長線上にあると考えらる。
利用されたツイッターアカウントは、プロフィール画像として機械学習によって生成された「StyleGAN」の画像を使用しているほか、アニメ画像、再利用されたアカウントを使用していた。フェイスブックやYouTubeでも、多くのアカウントが再利用されていた。これは、パスワードダンピングによる乗っ取りか、盗難アカウントの販売者からの購入によるものと考えられる。

異なるSNSを使い、協調した活動を行い、投稿を拡散している。それぞれの特徴は以下の通り。

・ツイッター
多数のアカウントが存在し、一部はコンテンツの投稿者として、大部分はコンテンツの増幅者として機能していた。StyleGANの画像を多用しているのが特徴。

・フェイスブック
過去に他の人間が所有していたアカウントを使用して活動を広め、再利用されたアカウントと新しいアカウントが混在する増幅ネットワークで、中にはStyleGANの画像を使用したものもあり、投稿やコメント機能を使って情報の拡散を後押ししている。

・YouTube
完成度の高い作品から短いインフォグラフィックスタイルの動画まで、さまざまなコンテンツを通じて情報を発信している。アカウントの多くは以前他に所有者がいたことが確認されており、アップロードの空白期間が長く、何年も活動がなかった後に英語以外の言語から中国語に変更されていることが多い。また、動画のコメント欄は、同じ動画をアップロードした偽アカウントと思われるものによって、動画を拡散させるツールとして利用されていた。

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一田和樹のメモ帳
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