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穏健化する白人至上主義と過激派 #非国家アクター メモ 5

ここまで白人至上主義過激派グループについてご紹介してきたが、穏健化する動きが出て来ている。ロイターの記事「「普通」を目指す白人至上主義、支持拡大へ戦略転換」(2022年4月10日、https://jp.reuters.com/article/elpaso-white-nationalist-us-idJPKCN1V50W6)には、その様子が描かれている。
Counter Extremism Project (CEP)のレポート「White Supremacy Groups in the United States」(https://www.counterextremism.com/content/white-supremacy-groups-united-states)でも、穏健化の流れを指摘している。「白人の優位性」ではなく「白人の独自性」を主張し、多くは暴力的な手段を取らずに世論を動かそうと考えている。しかし、その一方で過激派も確実に存在し、彼らの行動によって白人至上主義過激派グループの危険性が引き続き警戒されている。
具体的には白人至上主義者の元Traditionalist Worker Party (TWP) 党首 Matthew Heimbachは人種的優位よりも人種は分離すべきという主張に焦点を当てるべきという考えを広めており、ネオナチのNational Socialist Movement (NSM)は、主流に見えるように鉤十字の使用を中止した。
多くのグループは暴力行為を行わず、デモやプロパガンダを中心に展開しているが、過激な人種的エリートを主張する暴力的なグループに引きずられている。

「White Supremacy Groups in the United States」ではアメリカ国内の白人至上主義グループを調査し、まとめている。現在の白人至上主義者のグループの多くは20代から30代の若い層が多く、SNSや大学のキャンパスでプロパガンダを広め、勧誘している。若者中心のチームを作ったり、学生会員制を設けているグループもある
多くのグループは想像されているほど人数が多くない。最大でもSNSのフォロワーが10万人を超える程度だ。たとえば何度かご紹介したAtomwaffenは全米20のセルに80名程度のメンバーがいる。カナダ、イギリスなど海外のグループとの接点は多い。
The Baseは45名から70名。Rise Above Movement(RAM)は50名小規模もしくは個人での活動が中心という他のレポートの指摘と一致する。分裂なども多く、実態が把握しづらいこともよくわかる。「個別の11人」を彷彿させる。
レポートを見ると、活動内容は多様で暴力的手段の可否についてもさまざまだ。多様さを示すものとして、MMA(総合格闘技)の国際的なトーナメントが行われており、RAMは参加している。また、白人男性に仲間意識とトレーニングを提供するアスレチック・クラブを運用している。

多くのグループで穏健化が見られることと、白人至上主義全体が穏健化していることは別の話で、全体としての数が増加する中で穏健なグループが増えているだけなのかもしれない。当然、過激なグループも増えている。近年の事件の増加はそれを物語っている。

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