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拡大する中国の影響力と、低下する投資効果。フリーダムハウスのレポートから

フリーダムハウスが行った中国のメディア影響力について2019年1月から2021年12月にかけて行った調査「BEIJING’S GLOBAL MEDIA INFLUENCE」(https://freedomhouse.org/report/beijing-global-media-influence/2022/authoritarian-expansion-power-democratic-resilience)が先日公開された。かいつまんでその内容をご紹介したい。レポートは大きう2つに分かれている。ひとつは全体的なまとめ、もうひとつは各国別の状況である。個別のまとめは量も多く、散漫になるので今回は全体のまとめ部分のみご紹介する。ちなみに日本は調査対象になっていない
調査対象となった国は30カ国(なぜか国別状況には31カ国ある)で、中国のメディア影響力の強さと、抵抗力の強さをスコアとして整理している。中国が用いている手法、それに対抗する手段、つけ込まれる脆弱性なども紹介されている。
すごくおおざっぱにまとめると、中国はこの3年間影響力を拡大するための活動を増大させ、その効果は出ているものの、投資に見合うほどのものではないということらしい。

●レポートの概要

・全体の傾向

中国の影響力増大の努力スコアが特に高かった国は、1位台湾、2位イギリス、3位アメリカ、4位ナイジェリアで、対応力スコアが特に高かったのは1位台湾、2位アメリカ、3位オーストラリア、4位イギリス、5位フランス、6位南アフリカだった。
・30カ国のうち16カ国で影響力は「高い」「非常に高い」と評価
された。18カ国で影響力強化の努力が行われていた。
・中国とプロキシはメディアに情報を拡散するとともに、好ましくない情報を抑圧している。
中国の影響力は相手国の独立メディア、市民活動、報道の自由を保護する法律などによって抑制される。調査対象国すべてでなんらかの対抗措置がなされていた。
相手国政府の不適切な対応によって中国の影響力が拡大したケースがある。報道の自由の低下、政府のメディアへの攻撃などが23カ国で行われていた。
・中国の影響力に対抗する能力は国によって大きく異なる。Resilient(回復可能)と評価されたのは半数程度で、残りは脆弱と判断された。いくつかの国(台湾など)では影響力も強い一方でResilientも強かった。

・用いられている手法の主なものは下記。

多くの国で、中国の経済的・技術的な優位性を紹介し、折に触れて緊密な二国間関係の利点を紹介し、中国文化の魅力を伝えていた。調査対象すべての国で少なくとも1つの現地語で情報を発信しており、多くの場合2つ以上の言語を使用していた。
中国の外交官や国営メディアは偽情報や誤解を招く情報を公然と発信していた。
中国の関係する団体の広告が調査対象すべての国の130以上のメディアに掲載されていた。
28カ国で外交官や国営メディアがSNSアカウントを運用していたが、多くの利用者からはよい反応を得られていない。
21カ国のディアスポラに対してWeChatによるニュース発信で影響力を行使している。

・中国の検閲と脅迫の手法と、それへの対応および脆弱性は下記の通り。

・レポートには中国への対応のベストプラクティスと悪い例、今後の推奨される対応策も書かれている。

●感想

現地研究者へのアンケート調査による結果なので、フリーダムハウスの調査に協力する時点でバイアスがかかっている可能性とアンケートはどうしても主観的な要素が入るので必ずしも正確に実態を反映しているとは言えないかもしれない。
とはいえある程度実態を反映している可能性もあり、30カ国におよぶ調査であるので参考にはなりそう。
コロナ禍で中国が影響力拡大に力を入れても、新疆ウイグル問題やアメリカを中心とする非民主主義国家への非難キャンペーンなどで中国のイメージが悪化した分と差し引き少しプラスにおさまったようだ。
ただ、もともと中国の影響工作=外宣は、努力ほどには効果があがっていなかったようだ。その理由は、2つあって中国の素晴らしさをアピールしようとしていたことと、アメリカを中心とするグローバルノースが国際世論をコントロールしていたことだと思う。
デジタル影響工作は、怒りや憎しみをグローバルノース主流派以外に広げる時に最大の効果を発揮する。ロシアのデジタル影響工作の成功例はほとんどそうだ。
自国を礼賛するにしても、敵に対する怒りをかきたて危機感を煽ることが重要で、それがなければ効果は薄い。
そしてプロパガンダの対象はグローバルノース主流派以外が効果的である。表中の青はアメリカを中心とするグローバルノースが押さえている。




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