民主主義指数2022 ウクライナ侵攻を巡るグローバルノースとグローバルサウスの分断
新しい民主主義指数(https://www.eiu.com/n/campaigns/democracy-index-2022/)が公開された。日本でも関連した報道が出ていたが、いずれも日本を含めた各国の順位の話ばかりだった。民主主義指数は「優秀な国のランキング」ではないので、えらく間違った紹介の仕方だと思ったが、成績や資産で人を評価することを子供の頃からたたき込まれているので当然なのかもしれない。
●今回のハイライトはウクライナ侵攻を巡る問題
今回のレポートはウクライナに焦点をあて、歴史的な経緯も含めたくわしい特集が組まれていた。
民主主義指数のレポートはウクライナ侵攻を巡る問題は世界のパワーバランス、構造を変えかねない大きなイベントなので、それくらいの扱いがあっても当然かもしれない。
ロシア、ウクライナやヨーロッパの変遷などさまざまな整理が行われていたが、個人的に気になったのはグローバルサウスの扱いだ。
ウクライナ侵攻をグローバルノースとグローバルサウスの分断からとらえる識者は日本では少ない。また、世界の分断ととらえても、権威主義国vs民主主義国あるいは、グローバルノースと中東とそれ以外のグローバルサウスという3極構造が多い。これらはひとつの視点だと思うが、ウクライナ侵攻が象徴する現在進行形の分断の説明には適していない。
その点、今回の民主主義指数のレポートは、グローバルノースとグローバルサウスの分断という形で問題を整理していたのでわかりやすかった。
●全体
今回は指数が向上した地域や国があった一方で悪化したところもあり、全体としてはほぼ横ばいだった。これは実は結構問題だ。なぜならここ数年はコロナによる規制によって全体的な指数は悪化していた。規制緩和が世界的に進んだ現在、指数はコロナ前の状態に近づいて行くべきなのだが、そうはなっていない。
国の数でも人口でも世界の過半数を非民主主義国が占めている状況は変わっていない。レポートでは、民主主義国がほぼ半数を占めている(45.3%)という非常にあいまいな表現をしていた。
●グローバルノースvsグローバルサウス
誤解のないよう申しあげておくと、今回のレポートは多くの紙数をウクライナ侵攻を巡る話題に割いているが、その中心はロシアに関する分析である。今回、ご紹介するグローバルノースとサウスの分断は、その中のひとつのエピソードにすぎない。わざわざそれを紹介するのは、日本ではこの視点での分析があまり語られていないからにすぎない。
本レポートでは、世界の人口の3分2は中立かロシア寄りの国に住んでいることを指摘している。グローバルサウスがアメリカなどの反ロシアへの勧誘にのらない理由のひとつはアメリカが過去に行った一貫性のない他国への介入と身勝手な中止の体験だ。この根強い不信感が分断を生んでおり、容易にはなくならない。
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