中国のSpamouflageについてはニュースよりISDの記事がわかりやすかった
ここ数日、中国のSpamouflageについてのニュースをよく見かけるようになった。Metaの第3半期ごとの脅威レポートが公開されたことがきっかけなのだろう。記事は第2四半期の脅威レポートに書かれていた史上最大規模のテイクダウンの話と、第3四半期のレポートの内容がごたまぜに書かれており、さらにインタビューなども入っていてイメージはよく伝わるが具体的なことがわかりにくい。というか出典へのリンクのない記事が多い。
もう少し具体的なことを知りたい人やわかりやすい解説がほしい人にはISD(Institute for Strategic Dialogue)の「Pro-CCP network ‘Spamouflage’ weaponizes Gaza conflict to spread anti-US sentiment」(https://www.isdglobal.org/digital_dispatches/pro-ccp-network-spamouflage-weaponizes-gaza-conflict-to-spread-anti-us-sentiment/)の方がおすすめ。すでに書いたMeta第2四半期、第3四半期レポートの紹介と重複するが、おおまかに言うと下記。
・5年以上にわたって行われてきた中国のデジタル影響工作キャンペーンは主として反アメリカと親中を促進しようとしたものだった。最近はイスラエルとハマスの紛争など世界で起きていることを取り込んで変化している。
・ただし、こうした中国の努力にかかわらず、その効果は限定的で発信した情報が一般の人々に浸透している兆しはない。
・2023年8月にMetaが過去最大のテイクダウンを行ってから、CIBネットワークの再構築が開始された。Metaは中国のSpamouflageを何度かテイクダウンしているが、完全に排除することも再構築を防ぐこともできていない。
・Metaプラットフォームでの中国Spamouflageネットワークは再構築中であり、その規模は限定されている。そのため、今回のISDの記事の多くはXでいまだに活動中のSpamouflageが中心となっている。
(筆者注 なお、Metaの第3四半期レポートでは4,789のフェイスブックアカウントを削除となっているので、そこそこ再構築は進んでいたかも。ちなみに第2四半期のテイクダウンは7,704件)
・キャンペーンの戦術は過去とほぼ同じで、ボットや乗っ取ったアカウントを利用し、少数のアカウントから情報を発信し、多くのアカウントでいいねやシェアなどを行っている。
・2023年10月と11月にはガザに関連したナラティブが多く観測されていた。たとえば下記。
「アメリカは自国の利益と政治的理由でガザ紛争を煽っている」
「衰退するアメリカが世界の覇権を手放さないために世界中を紛争に巻き込む絶望的で有害な行動を取っている」
こうした発言はウクライナ侵攻において見られたものとほぼ一致している。
なお、近く来年のアメリカ選挙に関するSpamouflageのレポートも出るようなので注目だ。
余談 「Spamouflage」と「Dragonbridge」は違う会社が言ってるだけで、中身は同じものと書いてあった。やっぱり、わかりやすい。
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