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78カ国105の偽情報対策法の多くは情報統制に利用されていた
全米民主主義基金(National Endowment for Democracy)のCenter for International Media Assistance (CIMA)は、2011年から2022年の間に制定された78カ国105の偽情報対策法の多くがは言論の抑圧している実態をレポートした。
「Chilling Legislation: Tracking the Impact of “Fake News” Laws on Press Freedom Internationally」(CIMA,2023年7月19日、https://www.cima.ned.org/publication/chilling-legislation/)
●概要
このレポートでは虚偽または誤解を招く情報の拡散を制限するための偽情報対策法をMDM(misinformation, disinformation, and mal-information)法と呼んでいる。SNSプラットフォームの責任やリテラシー向上に関する法律もあるものの、その多くはMDM発信、拡散者の責任を問う内容となっていた。
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そして、情報がMDMに該当することを認定するのは政府であり、高額な罰金や刑事責任のリスクを負うことになっている。MDM法には言論の自由を脅かすリスクが大きく4つある。
1.過度の罰金:ジャーナリストや報道機関に罰金を課す。
2.逮捕:ジャーナリストや編集者を逮捕、投獄する。
3.コンテンツ規制と修正:ジャーナリストや報道機関に対し、コンテンツの削除や政府が承認した修正記事の掲載を求める。
4.管理負担の増加:これには、ライセンス制度、データのローカライズ、透明性要件、報道機関やメディア評議会の義務化などの措置が含まれる。
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2022年には全世界で400人近い記者が逮捕・投獄され、39人(約10%)がMDMの容疑だった。
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MDMが国家安全保障上の問題となっていることも大きな要因だ。安全保障上の問題にすることで情報統制を行い安くしている。
コロナのパンデミックがMDM法を加速した。インフォデミックの発生でMDM抑止を口実にしたMDM法が施行された。
このレポートでは、権威主義国だけでなく、民主主義国でもMDM法濫用や、過度に安全保障化する可能性があると指摘している。
●感想
EUなど一部を除くと偽情報対策の法律の多くが情報統制のためのものであることは以前から知られていたが、こうして網羅的、統計的に確認されたのは参考になる。また、全体を通して4つのパターンでの抑圧が試みられていることがわかったもよかった。
ただ、「4.管理負荷の増加」についてはある程度は必要な気がした(過剰なのはよくないが)。今が自由すぎる。メディアやジャーナリストは透明性がなさすぎる。SNSプラットフォームですら透明性レポートを公開している。メディアやジャーナリストも最低限やるべきことはやっておくべきだろう。
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