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アメリカ大統領選で展開されたロシアのオペレーション・オーバーロード

Recorded Futureは2024年10月23日に「Operation Overload Impersonates Media to Influence 2024 US Election」https://www.recordedfuture.com/research/operation-overload-impersonates-media-influence-2024-us-election )を公開した。

オペレーション・オーバーロードは、偽・誤情報キャンペーンの一環として、ファクトチェック機関、研究機関、メディアに自らの偽・誤情報を通報することによって、関係機関に過負荷をかけることと、関係機関が偽・誤情報を暴露することでさらなる拡散を狙った攻撃である。
これまで「オペレーション・オーバーロード」という呼称はCheckFirstが主に使っていたが、Recorded Futureが使用したことでドッペルゲンガーのようにメジャーになっていくのかもしれない。

今回のレポートではオペレーション・オーバーロードのターゲットが2014年8月からアメリカ大統領選に移っていると指摘している。流布しているのはハリス陣営への否定的なナラティブ、ウクライナ難民への誹謗中傷、LGBTQIA+コミュニティへの否定などとなっている。

そして、検証プロセスの強化や情報共有の拡大などをあげている。

オペレーションの内容やアトリビューションについては問題ないと思うのだが、目的の分析や提言にはそこまでちゃんとしていないような気がする。たとえば、ウォードルの拡声のトランペットといった効果には言及していない。検証をきちんと行ったとしても暴露すれば偽・誤情報はさらに拡散する。全体の流れを整理していないような気がする。全体とは現在のサイバー空間においての偽・誤情報の割合や影響力と、今後の見通しである。全体の中での割合が高くなく、影響も少ないならことさら取り上げる必要はない。オペレーション・オーバーロードはメジャーなメディアや研究機関が取り上げることによる情報ロンダリングと拡散の拡大を狙っているので、対象となる偽・誤情報のオペレーション・オーバーロード以前のサイバー空間での割合と、オペレーション・オーバーロード以後の割合の比較は必須であるし、影響力の比較も必要だろう。
今後についても重要。何度かとりあげているが、2024年以降、第3ステージへの移行が始まっている。第3ステージは偽・誤情報の割合が多数派になるステージだ。デバンキング、プレバンキング、ファクトチェックなどほとんどの対策は機能しなくなる。なぜなら、AIが自動的に生み出す偽・誤情報に追いつけないからだ。仮に追いつけたとしても、目にする情報のほとんどが偽・誤情報とそれを否定するものになってしまい、必要な情報の割合はどんどん下がってゆく。

オペレーション・オーバーロードに関する記事
ファクトチェックとメディアを誤・偽情報拡散に利用した「オペレーション・オーバーロード」の成功
https://note.com/ichi_twnovel/n/nedebd72a73bf

ファクトチェック団体とメディアをターゲットにした「オペレーション・オーバーロード」のアップデートhttps://inods.co.jp/news/3912/

ロシアのドッペルゲンガー実施企業Social Design Agencyの2.4GB漏洩文書https://inods.co.jp/news/4161/

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