グーグルが広告料金で支援する陰謀論や差別主義者サイトとアメリカのメディアエコシステム
今回はGLOBAL DISINFORMATION INDEX(GDI)社のレポートをもとに、グーグルなどのアドネットワークがアメリカのメディアエコシステムの中で陰謀論や差別主義者サイトを支援していることをご紹介したい。何度かご紹介したことがあるので(https://www.newsweekjapan.jp/ichida/2021/06/post-25.php)、繰り返しになるが、まだ紹介していなかったレポートをご紹介する。
グーグルのような企業が広告料金で資金を提供することが、問題のあるサイトを増殖させ、ウクライナ危機での分断を生む要因になっている。最近、陰謀論者や差別主義者が一斉にロシア擁護に向かった原因のひとつとも言えるだろう。注目度が上がる=広告収入が増えるという図式があるためだ。
●「GDI Primer: The U.S. (Dis)Information Ecosystem」
少し古いが2020年10月に公開されたGDIのレポート「GDI Primer: The U.S. (Dis)Information Ecosystem」(https://disinformationindex.org/wp-content/uploads/2021/03/GDI_Election-2020-Primer_Digital.pdf)には陰謀論や差別主義者サイトあるいは反ワクチンなどのサイトにはグーグルなどのアドネットワークが広告を出稿し、資金を提供している事が指摘されている。
このレポート全体は、広告主がブランドイメージを守るために気をつけなければならないこととして書かれている。安易にグーグルのアドネットワークに出稿すると、陰謀論や差別主義者サイトなどのサイトに広告が掲載されてブランドイメージを傷つけることになる。右派の陰謀論サイトとして有名なブライバートにナイキの広告が掲載された事例などが紹介されている。
●選挙に関する情報操作4つの類型
選挙における情報操作が集中した519のサイトを解析した結果、下記の4つの類型に分けることができた。おおまかな内容は下表の通りだ。
●情報操作のサイトに支払われた広告料の71%はグーグルから支払われていた
選挙に関する問題となる情報を流していた5つのサイトを特定している。
アメリカに拠点をおく、ブライバート、The Western Journal、The Epoch Timesと、ロシアのプロパガンダメディアであるRTとスプートニクだ。報告書には書かれていないが、The Epoch Timesは法輪功のメディアである。
ブライバートはアメリカで50位の人気サイトで、The Western Journalも上位140位だ。5つのサイトを合計すると、平均月間訪問者数は1億1千5百万人を超える。
519サイトのうち、200サイトがアドネットワークから広告の配信を受けていた。そのうちもっとも多かったのは、グーグル(77%)で2位のアマゾンを大きく引き離している。
これら200のサイトは毎月100万ドル(1億円以上)以上の広告収入を得ており、その71%はグーグルだ。2位のアマゾンは20%なので金額的にもグーグルがだんとつだ。
●感想
グーグルがファクトチェックやジャーナリスト支援などを行っている裏で、ネット世論操作に加担し、陰謀論や差別を助長させているのは何度も見たので、あらためて言うことはないのだが、グーグルの支援を受けているファクトチェック団体やジャーナリストはなんの疑問も持たないのだろうか? といつも思う。
以前、「ジャーナリストと聞いて連想するのは厚顔無恥」と書いたことがあるが、やっぱり体質は変わっていない気がする。全部が全部そうではないと思うし、そうでなければ私もジャーナリストの書いた記事を紹介したりはしない。しかし、グーグルべったりのジャーナリストが目に入ると、ついそう思ってしまう。大変、失礼なことだし、もうしわけないと思うんだけど。
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https://www.newsweekjapan.jp/ichida/2021/06/post-25.php
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https://note.com/ichi_twnovel/n/n197db671b2a6
関連書籍
『新聞記者』(角川新書、2017年10月12日)
『報道事変 なぜこの国では自由に質問できなくなったか』(朝日新書、南彰、2019年6月13日)
『権力と新聞の大問題 』(集英社新書、望月衣塑子、マーティン・ファクラー、2018年11月6日)